「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.6<東山魁夷編>

「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.6<東山魁夷編>

泉屋博古館で開催される「絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ―住友コレクションの近代日本画」。住友邸を飾った日本画家たちのくせのある名画が勢揃いの見逃せない展覧会です。近代日本画の名品を画家の筆ぐせからご鑑賞いただきます。本特集では、住友コレクションの近代日本画から6名の画家を選出し、泉屋博古館分館長の野地耕一郎先生に彼らの「筆ぐせ」の魅力をご紹介いただきます!!

◆円山派系現代画家、筆ぐせを見せないのが「癖」。

東山魁夷 スオミ 昭和38年(1963)
紙本着色・額 88.0×129.0㎝

東山魁夷(1908-1999)は横浜に生まれ、神戸で育った。東京美術学校で円山派系の日本画家結城素明に学び、昭和10年(1935)まで約2年間ドイツに留学。西洋絵画研究の一方で日本美術の特質を深く自覚した。そうした特異な体験から戦後日本画を代表する《残照》や《道》などの名作が生まれた。
スオミとは、フィンランド語で「湖沼」という意味。この絵は、昭和37年(1962)の北欧をめぐる白夜の旅の成果である。地平線の彼方のかすかな光が幾重にも湖面を照らし出し、白夜の張りつめた空気が風景の荘厳を伝える。その深遠な表現は、元をただせば円山派の没骨法の変容ともいえる絵筆の洋画風タッチによる重厚感と、自然の神々しい光を取り込むことで成立している。
戦後の日本画に求められたのは、油彩画の絵肌にも負けない重厚さだったから、魁夷の表現はそれに適うものだった。線描主体の「描く」絵から「塗る」絵画への転換は、おのずと筆ぐせを抑制することになったのである。


第1回~6回まで、菊池容斎森琴石富岡鉄斎竹内栖鳳小林古径、東山魁夷の「筆ぐせ」の魅力を
お伝えしてきました。ぜひ会場で近代日本画家たちの「筆ぐせ」をお楽しみください!!引き続き本特集では、「絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ―住友コレクションの近代日本画」の情報をご紹介いたします。
どうぞお楽しみに♪