「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.1 <菊池容斎編>

「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.1 <菊池容斎編>

泉屋博古館で開催される「絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ―住友コレクションの近代日本画」。住友邸を飾った日本画家たちのくせのある名画が勢揃いの見逃せない展覧会です。近代日本画の名品を画家の筆ぐせからご鑑賞いただきます。本特集では、住友コレクションの近代日本画から6名の画家を選出し、泉屋博古館分館長の野地耕一郎先生に彼らの「筆ぐせ」の魅力をご紹介いただきます!!

◆手塚治虫のご先祖様とも交友。和洋をハイブリッド化した近代画家の先駆け。


菊池容斎 桜図 弘化4年(1847)
絹本着色・軸 86.0×175.2㎝
 

菊池容斎(1788-1878)は江戸の幕臣だったが、18歳頃から狩野派と沈南蘋の長崎系写実画を学んだ。脱サラ(脱幕)して京阪に滞在し、円山四条派や土佐派、浮世絵などをさらに習得。西洋の絵手本や石版画も収集して西洋画法も研究した。偉大な漫画家手塚治虫のご先祖様手塚良仙という蘭方医と交友して、いまでいう美術解剖学のような指導も受けた気味がある。和洋の多様な絵画の筆法をハイブリッド化して、容斎は独自の覇気のある作風を築いた。この図の桜の花びらの装飾的なあしらいや遠山に効かせた群青や緑青の施色はやまと絵風であり、雄渾な樹幹の表現は狩野派を思わせながら四条派あたりに学んだ点苔表現を変容させたハッチングのような筆致がみえる。梢まで何度もねじ曲がった枝の広がりを太く長い走るような墨線で冷静に合理的に描くのが容斎の筆ぐせ。樹木全体がまるで複雑にのびた脳内の血管のように見えてくる。


◆次回は森琴石の筆ぐせをご紹介します!お楽しみに!!