「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.4<竹内栖鳳編>

「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.4<竹内栖鳳編>

泉屋博古館で開催される「絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ―住友コレクションの近代日本画」。住友邸を飾った日本画家たちのくせのある名画が勢揃いの見逃せない展覧会です。近代日本画の名品を画家の筆ぐせからご鑑賞いただきます。本特集では、住友コレクションの近代日本画から6名の画家を選出し、泉屋博古館分館長の野地耕一郎先生に彼らの「筆ぐせ」の魅力をご紹介いただきます!!

◆四条派の筆法をターナー風にアレンジ。

竹内栖鳳 禁城松翠 昭和3年(1928)
絹本着色・軸 62.2×72.2㎝


竹内栖鳳(1864-1942)は、京都御池通油小路の料亭の長男として生まれたが家業を継がず、好きな絵の道に進んだ。四条派の筆技を基礎に、幅広い古画研究によって諸流派の様式を折衷して「鵺(ぬえ)派」と悪評された。明治33年(1900)パリ万博の際に渡欧して、彼の地でコローやターナーに共鳴。帰国後はそれらも融合した風景画に新風を吹き込んで京都画壇の花形となった日本画家だ。
禁城とは、戦前まで皇居のことをさした。近景のお濠の輝く水面から遠景の櫓までを捉えた奥深い空間に溶けつつも浮き上がる樹木のシルエットは、コローやターナーの絵から学んだ方法だ。その松の枝振りは、濃墨で形を整えた上に群青や緑青の淡彩をわずかに差して滲ませた透明水彩のようにも見える。
栖鳳は、俳句も深くたしなんで軽妙洒脱な筆技を根本とする四条派の系譜にありながら、そのローカリティを武器にグローバルな絵画に通暁しえた希有な画家なのだ。鵺だった青年画家は、雅号の通り鳳に変身したのである。


次回は小林古径の筆ぐせをご紹介します!お楽しみに!!