「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.3<富岡鉄斎編>

「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.3<富岡鉄斎編>

泉屋博古館で開催される「絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ―住友コレクションの近代日本画」。住友邸を飾った日本画家たちのくせのある名画が勢揃いの見逃せない展覧会です。近代日本画の名品を画家の筆ぐせからご鑑賞いただきます。本特集では、住友コレクションの近代日本画から6名の画家を選出し、泉屋博古館分館長の野地耕一郎先生に彼らの「筆ぐせ」の魅力をご紹介いただきます!!

◆和漢の画法を徹底的にカスタマイズした鉄斎の我法

富岡鉄斎 古柯頑石図 明治45年(1912)
紙本着色・軸 121.5×40.3㎝

近代の文人画家で、もっとも個性的なのが富岡鉄斎(1836-1924)だ。鉄斎は、京都三条衣棚の生まれ。諸学を修め高潔な人格を尊び、画もまた人間性を高める一つの遊戯であるという姿勢を貫いて、和漢の様々な書画に触れた。多様な画法を学びながら、そこから逸脱した独自な筆法を編み出すが、それは結果的にセザンヌやフォービスム(野獣派)の粗放な描法とも重ねられて、のちに世界的に評価された。
古柯は古びた枝、頑石はてごわい岩の意。枯木竹石のモチーフは、孤高な様が文人に好まれ、さかんに描かれた。鉄斎は、勢いにまかせた筆遣いで描き切ったように見せながら、岩肌にはかすかに群青を施し、枯淡ななかに気韻を点じている。その手口がただ者ではない。賛文には明の文人李日華の画法に倣ったとしているが、むしろ我儘な筆ぐせによる徹底した自由さが、結果的にモダニティーに通じてしまっている。我儘とは「われのまま」なのだ、と77歳喜寿の鉄斎の筆が主張している。


次回は竹内栖鳳の筆ぐせをご紹介します!お楽しみに!!