【ことしるべ美術クラブ スタッフおススメのアートスポット!vol.134】大阪市立東洋陶磁美術館 特別展「天目―中国黒釉の美」

【ことしるべ美術クラブ スタッフおススメのアートスポット!vol.134】大阪市立東洋陶磁美術館 特別展「天目―中国黒釉の美」

特別展「天目―中国黒釉の美」

日本には数多くの中国製の天目(茶碗)が伝世しています。
なかでも近年国内外で話題となっている曜変天目と油滴天目は中国宋時代に建窯でつくられた黒釉茶碗の最高峰で、当館には日本伝世の油滴天目で唯一国宝に指定されている作品が所蔵されています。
中国陶磁の歴史において、重要な系譜の一つである天目をはじめとする黒釉陶磁にスポットをあて、東洋陶磁美術館所蔵品に個人所蔵品を加えた唐時代から宋・金時代の作品計24点により、中国黒釉の世界とその美に迫る展覧会が開催中です。

また、近現代の作家による天目作品を通して、伝統と創造による天目の多彩な表現を紹介する、特集展「現代の天目―伝統と創造」も同時開催中!

今回、展覧会担当学芸員より、[ことしるべ]読者に展覧会の見どころをお聞きしましたので、紹介します。

今から800年ほど前に中国宋時代につくられた喫茶用の黒釉茶碗、それが日本に伝わりその後「天目」として今に伝わっています。
その最高峰の一つが当館所蔵の国宝「油滴天目」です。本展の大きな見どころは、まずその国宝「油滴天目」を免震台付回転展示台においてご覧いただけることです。(写真①)
さらに、これまでご要望の多かった国宝「油滴天目」の内面をご覧いただけるよう、特別の踏み台を設置しました。(写真②)
国宝「油滴天目」の美しい斑文と虹色の光彩の魅力を360度全方向からじっくりとご堪能ください。
次に、一部作品には作品解説とともに、高精細・広波長域撮影による写真を掲示しています。
これは、本展の公式図録『天目―中国黒釉の美』(中央公論美術出版)に掲載されている写真家・西川茂氏によって撮影されたものです。
色の再現において現時点で最も優れた機材を使用し、これまで肉眼ではとらえきれなかった陶磁器が本来持つ色や質感をリアルに再現しています。
実際の作品との色の違いにはじめは驚かれ、あるいは戸惑われるかもしれませんが、作品をじっくりご覧いただくと、そこには写真に見られるような様々な色があることに気づかれるはずです。
さらに今回は、同時開催の特集展「現代の天目―伝統と創造」において日本、中国、フランスなど様々な現代の天目も紹介しています。

古今東西の「天目づくし」の展示をぜひお楽しみください。
(大阪市立東洋陶磁美術館学芸課長代理 小林仁)

写真①写真②

◆ 主 な 出 品 作 品 ◆


●国宝 油滴天目(ゆてきてんもく)


南宋時代・12~13世紀/建窯
高7.5cm、口径12.2cm
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)
撮影:西川茂

油滴天目は福建省にある建窯(けんよう)で宋時代に焼かれたもので、釉薬の表面に生じた油の滴のような斑文がその名の由来です。
茶碗の内外の黒釉にびっしりと生じた銀色の斑文には、青色や金色などに輝く光彩(虹彩)が加わり幻想的な美しさを見せています。
重さは349gで、手に持つと安定感のある心地よい重みが伝わります。
本作は関白・豊臣秀次(1568~1595)が所持し、のち西本願寺、京都三井家、若狭酒井家に伝来しました。伝世の油滴天目の最高傑作です。

●重要文化財 木葉天目(このはてんもく)


南宋時代・12~13世紀/吉州窯
高5.3cm、口径14.7cm
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)
撮影:西川茂

吉州窯(きっしゅうよう)の天目は、胎土が比較的白く、薄づくりで高台が小さく低いのが特徴です。
本作は器壁が直線的に大きく開いた平碗で、見込みには本物の木葉が焼き付けられていることから、「木葉天目」と呼ばれています。
さらに、見込みの一部には金彩の梅花文の痕跡も確認できます。加賀藩主前田家に伝来したものです。伝世の木葉天目の最高傑作として名高いものです。

●黒釉 白斑壺(こくゆうはくはん つぼ)


唐時代・8〜9世紀
高18.4cm、幅23.1cm
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)
撮影:西川茂

成熟した黒釉は後漢時代に誕生し、以降さまざまな発展を遂げました。
中唐から晩唐にかけて、現在の河南省を中心とした地域では、黒釉に失透性の乳濁釉(藁灰釉など)をかけ合わせる装飾的な技法が登場しました。
本作は壺の内外に黒釉がかけられ、白斑がダイナミックに施されていて、白斑の一部は青白く発色しています。本作は鉄鉢(てっぱつ)に似た胴部に張りのある丸壺です。

●黒釉堆線文 水注(こくゆうついせんもん すいちゅう)


金時代・12~13世紀/磁州窯系
高20.2cm、幅14.5cm
大阪市立東洋陶磁美術館(住友グループ寄贈/安宅コレクション)
撮影:西川茂

本作は、金属器を祖型とするエレガントな造形を見せ、肩から裾にかけて繊細な白堆線がストライプ状に施されています。
白堆線1本1本に、神経の行き届いた緊張感のある表現がうかがえます。黒釉はやや飴色がかった艶やかな色調です。
注口部分は先端を少し押し曲げた可愛らしい造形を見せています。山西省の金時代の墓から出土した茶器セットに小型の類品が見られることから、こうした水注が喫茶の際に用いられたことがうかがえます。

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お知らせ!!

特別展「竹工芸名品展:ニューヨークのアビーコレクション メトロポリタン美術館所蔵」期間中に展示していた四代田辺竹雲斎によるインスタレーション作品《GATE》の展示期間を2020年9月27日(日)まで再延長いたしました。
詳細コチラ→ http://www.moco.or.jp/whatsnew/newarrival/2226/  


四代田辺竹雲斎(1973—)GATE  2019年  虎竹
   photograph by T. MINAMOTO

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[ことしるべ]で取り上げた、大阪市立東洋陶磁美術館の過去の展覧会

特別展「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション-メトロポリタン美術館所蔵」
特集展「受贈記念 辻井コレクション 灯火具―ゆらめくあかり」
特別展「マリメッコ・スピリッツ フィンランド・ミーツ・ジャパン」
「フィンランド陶芸 芸術家たちのユートピア―コレクション・カッコネン」

 

◆特別展「天目―中国黒釉の美」◆
●会  期:2020年6月2日(火)~11月8日(日) ※展覧会終了日を8月16日から11月8日に延期いたしました。
●会  場:大阪市立東洋陶磁美術館・室 (大阪市北区中之島1-1-26 大阪市中央公会堂東側)
●アクセス:京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
      Osaka Metro御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
      Osaka Metro堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m
●休 館 日:月曜日(8月10日、9月21日は開館)、8月11日(火)、9月23日(水)
●開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
●入 館 料:一般1,400(1,200)円、高校生・大学生700(600)円
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)、大阪市内在住の65歳以上の方は無料(証明書等提示)
※上記の料金で館内の展示すべてをご覧いただけます。
●主  催:大阪市立東洋陶磁美術館
●共  催:NHK大阪放送局、NHKエンタープライズ近畿
●同時開催:[特集展]現代の天目―伝統と創造
      [コレクション展]安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁、李秉昌コレクション韓国陶磁、日本陶磁、沖正一郎コレクション鼻煙壺


問い合せ 大阪市立東洋陶磁美術館 電話 : 06-6223-0055 FAX : 06-6223-0057
             HP : http://www.moco.or.jp