約450年前、初代長次郎により誕生した樂茶碗。その表現は「踏襲」ではなく、それぞれの時代を各当代が生き、常に革新を続けながら焼き継がれてきました。現代からの視点で歴代の「今―現代」を見る本展。不連続の連続によって生み出される樂焼の芸術をご覧いただけます。
本展で公開される初代長次郎と当代・十五代 樂吉左衞門のお茶碗をシリーズでご紹介します。
俊寛しゅんかん
変化や動きを抑制した長次郎茶碗に
西洋的な「シンメトリー」という概念は当てはまらないが、
それを承知であえてその概念を用いるならば、
この茶碗は「アシンメトリー」な造形と言える。
胴部片方を張りだし、対面を微妙に凹ませている。
口の部分にも緩やかな起伏が見られる。
造形への意思がわずかに立っている。
初代長次郎 黒樂茶碗(重要文化財) 三井記念美術館蔵
黒銅の雲は陰気を胎んでゆるり降下する
ゆらなびく雲旗をおしたて
自作詩「涔雲に浮かんで」をテーマとするシリーズ作品。
本作はシリーズ2作目、詩の3行、4行目が当てられている。
「涔雲に浮かんで」
涔雲は風を涵して谷間を巡る
悠々雲は濃藍の洸気を集めて浮上し
黒銅の雲は陰気を胎んでゆるり降下する
ゆらなびく雲旗をおしたて
雲船に乗りて山界を巡らん
眼下蒼茫白雲に煙る
「黒銅の雲」と謳われている胴部の黒い景色は、銅釉を用いている。
十五代 樂吉左衞門 焼貫黒樂茶碗 佐川美術館蔵