フラワーアーティストの東信は、これまで幾多の表現を通じて花や植物の美しさや可能性を探求してきました。
世界各地で巨大なBotanical Sculptureといった革新的なインスタレーションを手がける一方で、花が咲いて朽ち果てるまでの変容を捉えた映像作品から子ども向けのアニメーション制作まで、常に花の持つ無限の可能性と命の尊さに対峙してきました。こうした活動の中で、2018年頃より、彼の関心は花の内部構造へも広がりを見せ、レントゲン撮影を通じた未知の領域への挑戦がスタートしました。
本展覧会では、長年にわたり新聞を印刷してきた面影を遺す京都新聞印刷工場跡地の大空間を舞台に、その X 線写真撮影時のフィルム原版および CT スキャンで撮影した映像を展示します。
技術の進歩により、これまで目にすることのなかった世界が可視化され、私たちは新たな視点で植物の微細で崇高な世界を目撃することになります。暗闇の中に光るその先に、多様で神秘に満ちた植物の世界が静かに立ち現れるでしょう。
樂焼は、「樂家の当主」による個人の作品の連続がその根幹を支え、連綿と数百年も続いてきました。現在十六代を数える樂家では、初代「長次郎」から全ての代の茶碗が残され、それぞれが初代の模倣ではなく、作者独自の視線や考えが色濃く落とし込まれています。「茶碗には、その人が宿る」ともいわれるように、さまざまな時代の中、必死に生きた歴代の痕跡が茶碗に込められる茶碗を通し、「茶」に対する想いや美意識、魅力を感じていただきます。
1944年中国四川省生まれで、現在、上海を拠点に活動する画家・方攸敏(ファン・ユーミン)による、中国の書や絵画の伝統を今に伝える作品が、醍醐寺霊宝館で観られます。
力強い筆致で花を描くその作風から「花王」と称され、上海画壇では避けられない存在となっている方氏による醍醐寺への奉納作品「醍醐桜」ほか作品約20点を、醍醐寺の桜とともにお楽しみください。
半世紀以上、海と海に生きるものたちを撮り続けている水中写真家、中村征夫(1945- 秋田県生まれ)。水面下から広がる雄大な海には、それぞれ生きものたちが暮らすユニークな楽園(社会)が存在します。色や形など、見れば見るほど色彩豊かな海の世界。うっかり見逃してしまうような海の生きものたちを、100点を超える写真作品で紹介します。2024年9月、初めて京都の海に潜った際の撮りおろし最新作も特別展示します。笑い顔や泣き顔、すまし顔など、まったく人間と変わらない個性溢れる生きものたちとの一期一会を、写真家のユーモア溢れるコメントと共にお楽しみください。
京都を中心とした現代陶芸界は、世界的にみても作家の層が厚く、田嶋悦子は1980年代に関西のエネルギー溢れる自由な気風のなかで、女性の立場からの彩色豊かな官能的な作品を発表し注目を集めました。
1990年代からは、ガラスと陶を組み合わせた作風へと変貌をとげ、現代陶芸の領域を広げてミックストメディアの作品を制作しています。田嶋悦子は陶にはないガラスの透光性や質感に惹かれて、陶との組み合わせによる表現の効果を発揮させています。
作品のモチーフは花を基調とした植物的な形態であり、陶とガラスの素材感が違和感なく調和し、陶土の重量感はなく、拡張する作品空間が軽やかな雰囲気を漂わせています。
本展では、今回新たに制作された、鍵善良房の菓子詰合せ『園の賑い』をイメージした作品を中心に、1980年代から現在までの作品を展覧いたします。透過する光と作品表面の表情による、蠱惑的な世界を是非ご堪能ください。 出川哲朗(大阪市立東洋陶磁美術館名誉館長)
壁や床に映し出された作品の中に入ったり触れたりすることで、魔法を使っているような体験ができます。
色とりどりの光の粒の中に動き回る「的」が出現し、鑑賞者が「玉」を投げて的中させると、噴水のように舞い上がる「SplashDisplay」や、絵本を手に持って、空間を歩き回りながら世界中のさまざまな童話や昔話を描いたピクセルアニメーション作品を鑑賞する「がそのもり」、クリスタルにライトを当てることで、空間に光の虹彩を放つ「アスタリス」など、京都府初公開のものを中心に、子どもから大人までが直感的に楽しめる16作品を展示します。
左写真:的場やすし/山野真吾/徳井太郎 /「SplashDisplay」
/©yasushi MATOBA/shingo YAMANO/taro TOKUI
国内外の第一線で活躍するアーティスト、そして彼らの推薦を受け、あるいは公募により選ばれた新進気鋭の若手アーティストらの作品を展示する「ARTISTS’ FAIR KYOTO(アーティスツ フェア キョウト)2025」を開催します。
「Art Singularity(アートシンギュラリティ)」をコンセプトに掲げ、アーティストが世界のマーケットを見据え、次の次元へと活躍の場を拡大するアートの特異点を目指す新しい形のアートフェアです。
8回目の開催となる今回は、京都国立博物館・京都新聞ビル・東福寺を会場に展開。刺激的なアートの現場を体感してください。
※会場ごとに会期・時間が異なりますのでご注意ください
※東福寺会場のみ3月6日(木)まで
写実絵画とは、従来の西洋絵画にあった神話や歴史、宗教と言ったテーマではなく、社会や日常生活などを客観的に描いたものをさします。19世紀中頃にフランスを中心に興った写実主義と言われたこの芸術様式は、後の印象派や表現主義などの近代美術に大きな影響を与えました。今日の日本の写実絵画は、一般には写真と見まがうばかりの絵をイメージするかもしれませんが、本来は現実あるいは対象を深く見つめることで、社会や人の本質を描き出そうとする画家たちの挑戦と言っても過言ではありません。本コレクションの特徴は、いわゆる大家よりもむしろ中堅、若手に軸足が置かれ、ミュージアムピースと呼ばれる大作から濃密な筆致の小作品で構成され、そのモチーフも静物、人物、風景と、幅広くかつヴァリエーションに富んでいます。本展は、鹿児島県出水市にある鶴の来る町ミュージアムの400点余りの写実絵画コレクションの中から厳選して展覧いたします。スマートフォンや高精細なデジタルカメラで誰にでも容易く対象を写し取れる時代に、画家自身の思いや眼差しをとおして、一筆一筆丹念に塗り重ね表現された写実絵画の世界を、是非この機会にお楽しみください。
1926年(大正15年)、安野光雅は島根県津和野町に生まれました。画家、絵本作家、装丁家、デザイナー、著述家として半世紀以上にわたり幅広い分野で創作活動を続け、2020年、94歳の生涯を閉じました。
安野の数ある作品の中で、風景は代表的なテーマのひとつです。国内外を旅しながら描いた風景画は、静かな余情を湛え、見る者の心に語りかけてきます。
そして「空想」することも安野が大切にしたことの一つ。空想しながら自分の心で感じたことを楽しく、やさしく絵に描いていく。代表作である『旅の絵本』や『空想工房の絵本』はそうして生まれました。
本展では安野が旅し、空想し、描いた風景の世界を見つめます。ヨーロッパの国々や日本の各地、さらに司馬遼太郎と旅して描いた風景の数々。世界的名作であり、自然、そして街の描写も美しい『旅の絵本Ⅲ』〈イギリス編〉は全場面を展示。さらに安野自身の子ども時代を描いた『ついきのうのこと』、切り絵の表現がユニークな『昔咄きりがみ桃太郎』といった絵本の世界。デザイナーとして取り組んだ装丁とその原画など、安野の多彩な仕事を120点を超える作品、資料から紐解きます。
「京都 日本画新展」は2008年度の創設以来、日本画を志す若手作家たちが生き生きと日本画を描くことを応援し、活動の奨励・支援を目的として毎年作品発表の場を提供してきました。本展では、若手作家の自由な発想にあふれた意欲的な作品を一堂に展観します。伝統と文化が今なお根付く、大学の町・京都の特性を最大限に生かし、日本画の未来を担う作家たちとともに、京都ならではの日本画展を目指します。
日本画家の堂本印象(1891-1975)は、生涯にわたり数多くの歴史画を描いており、高い評価を得ています。
本展では、印象の描いた歴史画に焦点を当てます。
京都府立堂本印象美術館の館蔵品の中から、大正時代の《維摩》をはじめ、戦後の第一作となる《太子降誕》、絶筆の《善導大師》など、歴史人物を題材にした初期から晩年の代表作を展示。
さらに今回は特別に、京都の神社に奉納した神様の絵も展示します。
深い研究と考証による作品から、独創的な抽象表現まで、印象のあふれる才能を感じてください。
京都の華道文化の活性化を目指して、若手華道家の作品を展示する「京都新世代いけばな展2025」を開催します。ご鑑賞ください。
「院展」の名で親しまれている日本美術院は、明治31年(1898年)、東京美術学校長を退任した岡倉天心の指導のもと創設された日本画の研究団体です。天心の没後、大正3年(1914年)、横山大観らによって再興、以後一世紀に渡り近代日本画の発展に大きく寄与してきた「院展」は、今年再興109回展を迎えます。
シリーズ展「仏教の思想と文化」では、インドで誕生した仏教がアジア全域に広まり、日本の社会にも根づいていく約2500年の歩みを、大きく「アジアの仏教」と「日本の仏教」に分けて紹介します。
仏教経典には、仏や菩薩は一切衆生を必ず救済しようと誓いを立て、さまざまな実践を行い、教えを説くとあります。一方、在家者たちはあらゆる願いを託して、仏・菩薩の像をあらわしたり、経典を書写したり、法会を開催したりとさまざまな供養を行いました。特集展示では、仏教美術を通して、だれもが心安らかに過ごすことを願った仏教徒たちのすがたをみていきます。
2024年11月30日(土)~12月29日(日)の期間、京都新聞ビル地下1階印刷工場跡を会場に、「世界報道写真展2024京都」を開催します。
World Press Photo(世界報道写真展)は、オランダ・アムステルダムに本部を置く世界報道写真財団(World Press Photo Foundation)が開催するWorld Press Photo Contest(世界報道写真コンテスト)の入賞作品を展示するものです。今年は130の国と地域約4,000人から約6万の写真とプロジェクトの応募があり、入賞した32作品を展示します。
(写真)世界報道写真展2024京都の展示会場
細見美術館にて、琳派展シリーズの第24回目を開催します。
江戸琳派を確立した酒井抱一(1761~1828)の終の棲家となるのが「雨華庵」(うげあん)です。抱一はここで多数の晩年作を描き、その没後は抱一を慕う門下の絵師たちのよりどころとなりました。
本展では、抱一をはじめ「雨華庵」ゆかりの絵師たちの江戸琳派を紹介します。抱一に憧れ、慕った絵師たちの100年以上におよぶ江戸琳派の軌跡とその魅力をご堪能ください。
京都・大原で自給自足の生活を営みながら、自然に向かい、戦後の水墨表現に独自の画境を拓いた小松均(1902-1989)。
明治35(1902)年に山形県大石田町に生まれ、18歳の時に画家を志して上京。川端画学校で学び、大正13(1924)年の第4回国画創作協会展(国展)初入選をきっかけに翌年京都へ移り土田麦僊に師事しました。国展解散後は帝展と院展で入選を重ね、昭和2(1927)年からは大原を拠点とし、大原の四季の自然のほか、生き物や植物などの身近なモチーフや、各地の風景を描き続けました。
また、小松は昭和初期から徹底した写実による水墨表現を模索し、1950年代中期以降から代表作とも言える力強い墨画による大画面の連作によって日本画の新たな表現を示しました。
その風貌と作画に取り組む姿勢から“画仙人”と呼ばれた小松均。
本展では、孤高の画家・小松均に魅せられた一人のコレクターの所蔵品から、“画仙人”の眼差しを通して描かれた世界をご紹介します。
日本で最も長い歴史を持つ芸術大学である「京都市立芸術大学」の京都駅東地区移転を記念した特別展を開催します。
本展では、京都市立芸術大学の150年近い歴史の中で生み出されてきた数々の〈はじめて〉をテーマに、芸術資料館所蔵品を中心とするさまざまな作品・資料を4期に分けて紹介。
第1期と第2期では明治・大正の動き、第3期・第4期では戦後まで含み、全体を通して京都市立芸術大学の歴史と芸術資料館の主要なコレクションを一覧できる貴重な機会です。
次代の工芸美術をリードする創作工芸美術集団「工芸美術創工会」による、第35回目の節目となる展覧会。さまざまな表現の形、確かな技術に根差した作品をお楽しみください。
産業革命を経て、工業化が進む19世紀から20世紀初頭のヨーロッパで花開いた「アール・ヌーヴォー(新しい芸術)」。その中心的人物として、ガラス工芸を芸術の域にまで高めたのが、フランスのガラス工芸家エミール・ガレ(1846-1904)です。ドイツ留学後にフランスのマイゼンタールでガラス技術を習得。故郷のロレーヌ地方ナンシーに戻ってからは、父親の事業に加わり、ガラス、陶器の製造管理をはじめ、商品開発やデザインなど芸術的指導を任されます。植物学者でもあったガレは、自然観察、植物学、生物学の知識を活かし、花々や昆虫などの生き物をモチーフに、自然美と生命の輝きをガラス工芸で表現しました。また、ジャポニスム(日本趣味)にも大きな影響を受け、日本美術との出会いにより、鷹や松など日本らしいモチーフをデザインに取り入れ、様々な技法で独自の世界観を創り出しました。1889年、1900年のパリ万国博覧会ではグランプリを受賞し、国際的評価を得、ガレの作品は一躍人気となります。1901年には「産業芸術地方同盟(ナンシー派)」を設立し、工芸の発展に貢献しました。
本展は、没後120年となるガレの偉業を、約70点の美しいガラス作品で振り返ります。