作陶する場所というのは、その作品に大きく影響する。
樂茶碗を造ろうと思えば、庭先でも造れるはずである。
しかし、できない。
何故か?
樂吉左衞門にしても坂倉新兵衛氏にしても、15代目という長き歴史の重圧が肩にのしかかっている。そのプレッシャーを背負い向き合える場所(=それぞれの仕事場)でないと、作品を生み出せないのである。
樂家で手捏ね後、へらで削る坂倉新兵衛氏 撮影:田口葉子
「それぞれの焼物のたどってきた歴史の中に今があり そしてそれぞれの家のなかにも歴史がある ほんの片隅の何気ない物にも得も言われぬ魅力があり それらが窯場の文化を形作ってまた次に続いていく」(坂倉新兵衛)
今回、二人の挑戦は、そんなお互いの歴史の中に飛び込む挑戦といえよう。
15代坂倉新兵衛 黒樂茶碗 撮影:鈴木一彦
お互い相手の仕事場に行って仕事をすると 最初に思った以上にこの場所で そしてこの人達の手助けで続いてきた ここでしかできない焼物であるという思いがひしひしとわいてきた 最初の興味深い企画からもっとこの場所 そしてこの時代の一部を共有させてもらっているという気になる
坂倉新兵衛
一部、「樂と萩 新兵衛の樂 吉左衞門の萩」(2014年、世界文化社刊)より転載