【「京都 日本画新展」関連 個展のご案内】33 ◆終了◆

「西久松 綾 個展 風土の記憶」が8月6日(日)までギャラリーヒルゲート(京都市中京区)で開催されました。


西久松さんは、第3回 続「京都 日本画新展」で大賞を受賞された作家さんです。会場には、水や樹、岩、蓮や鯰を描いた作品がずらり。展示作品はほぼ新作作品で構成されていました。高等学校の頃より専門的に日本画を学び始め、約12年間の想いが込められた初個展です。会場内には、日本画だけでなく作品のモチーフとなった流木や陶芸作品も展示されていました。陶芸作品について伺うと「釉薬ではなく日本画の画材を使用しています。日本画を志す作家ならではの作品に仕上がっているので、じっくりと見ていただきたいです。」と解説してくださいました。

作品に用いるモチーフについてもお話しいただきました。「約12年作品を制作する中で、描くモチーフも樹、岩、水と変化していきました。今は蓮や鯰を描くことに関心を持っています。」と西久松さん。第3回 続「京都 日本画新展」で大賞を受賞した作品〈みなも時雨る〉をはじめ、「水」を描くことが多かったそうですが、抽象的なモチーフなので、最近は蓮や鯰といった具体的な対象も描くようになったそうです。「鯰の余計なものを省いた姿に魅了されます。鯰を描くことで、画面に黒が入り、作品が引き締まるところも近年よく描いている理由です。鯰の見ていただきたいポイントは”目”です。描くときは先人たちの龍を描いた作品の目の描き方を意識しています。」と教えてくださいました。


展示された作品はどれもいつまでも鑑賞していたくなる作品ばかり。見れば見るほど、丹念に描き込まれた様々な色彩や質感に魅了されます。制作において最も大切にしていることについて伺うと、「物事の成り立ちの根源を追求することに重きを置いています。例えば、樹を描くときは、種を描き、根を生やし、必ず筆先は付け根から枝先へ動かし、画面の中で樹を育てていきます。「根源や真理を追究したい」という想いが私の作品制作の原動力。その想いを日本画という手段で表現しているのです。」と語ってくださいました。続けて、「この〈雨後〉という作品は岩や水を描いていますが、岩と水のどちらを先に描くべきなのか考えて制作しました。成り立ちを思考し、それを作品制作の作業に置き換え、追体験を試みることによって対象を理解し、創造していくことが作品の説得力に繋がっていくと信じています。」とお話いただきました。

川の魚や生き物を捕まえたり、観察することが趣味の西久松さん。自宅でも多くの生き物を飼っておられるそうです。「川に出かけると自然の生態系が破壊されているのを実感します。京都にいるはずの生き物がいなかったり、いないはずの生き物がいたりするのです。」とお話くださいました。日常的に自然と向き合っておられる西久松さんだからこそ、絶えず変わりゆく自然を記憶にとどめるかのように描くことができるのでしょう。これからも西久松さんが描く作品の数々にどうぞご期待ください。

<展覧会概要>
展覧会名:「西久松 綾 個展 風土の記憶」
日時:2017年8月1日(火)~8月6日(日)12:00~19:00
 ※最終日は17:00まで
場所:ギャラリーヒルゲート
  (京都市中京区寺町三条上ル天性寺前町)