10月5日(土)は、絵本「Michi」などで知られる作家、junaidaさんによるギャラリートークを開催しました。
当日は本展の企画に携わった廣済堂の成澤彩さんも一緒にお話しいただきました。
①からのつづきです
成澤さん:ここにはタンの自宅のアトリエの再現もあります。共同で借りている別のアトリエもあるそうですが、小さい作品の構想はここで練っているんだとか。
junaidaさん:アーティストのアトリエを見るのってテンションが上がりますよね。こうやって下絵を壁に貼っているんでしょうか。
成:ほとんど自身が描いたものですが、自身に影響を与えた作家の絵も貼ってあります。
j:僕のアトリエには何も貼っていないですね。机の前とか何もなくて、そこをぼーっと見てイメージを練ることもあります。
成:さて、油彩のゾーンに入りました。
j:油彩もかっこいいですね!ラフ、パステル、油彩と段階を踏んでいるのにそれぞれでイメージの鮮度が落ちていないのがすごい。段階を踏む中で新しい発見があるんだろうなーと。
見えたものがそのまま出せる。「君はこういうやつだったんだ」の整理がきっちりできています。
成:この中で『内なる町から来た話』は、まだ日本で出版されていない物語です。
『内なる町から来た話』より 2017年 ⒸShaun Tan
j:物語を知らずに見ても「読める」絵ですね。小説を読んだときに自分の中で場面を想像するように、絵だけを見ても言葉とか感情とか記憶が見つけられる。
読む前に絵だけを見てストーリーを想像してもいいと思います。僕も見る人に想像力を掻き立ててくれるような絵が描きたいです。
成:日常の風景を油彩で描いた作品もあります。
j:この絵、ホテルの廊下のさみしい感じがたまらないですね。アーティストの人間性やもののとらえ方が見えてきます。
タンは腕も頭も内面もすべて一体化したアーティストだと思います。街を歩きながら目で形を追って目で描くようなタイプ。
成:かつて訪日した際に、建物の配管ばっかりを見ていたエピソードもありました。
j:目でみて、目で描く。色を感じる。形をとる。写真を撮ってしまうとそこで満足しちゃいますからね。
成:最後はタン自身が映像化に取り組んだ『ロスト・シング』のアニメーションを上映しています。
j:通しでみたほうがいいです。16分。特にラストですね。絵本は見開き1ページになっている場面ですけど、ここのシーンをアニメーションでやりたかったんだろうなと思います。
やっぱり絵に思いやりがありますね。人柄が出ています。
junaida氏
1978年生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。ファンタジーとノスタルジーが交錯する風景を、優れた作画力と物語性で描き出す。
国内外の個展や展覧会での作品発表、絵本出版など多岐にわたる活動を行っている。
最新絵本『の』が11月6日に刊行予定。
ショーン・タンの世界展は14日まで美術館「えき」KYOTOで開催中です。