10月5日(土)は、絵本「Michi」などで知られる作家、junaidaさんによるギャラリートークを開催しました。
当日は本展の企画に携わった廣済堂の成澤彩さんも一緒にお話しいただきました。
junaidaさん:ショーン・タンといえば『アライバル』です。人前で言うことではないけれど、やっぱりうまいですね。
「上手」よりかは「巧み」でしょうか。技術もすごいけれど、それだけのうまさではなくて、作品に作家のまなざしをきっちり盛りこめている、そういう巧みさがあります。
『アライバル』より 2004~2006年 ⒸShaun Tan
成澤さん:制作に5・6年かけていて、写真を撮ってから絵におこした場面もあります。そういうプロセスは作家としてどう思われますか。
j:僕はスケッチやラフは描くけれど、本番にフレッシュなものを持っていたいので、それほど多くは描きません。
イメージを出すのにつかみ方は人それぞれです。僕の中でイメージは常にうごめいていて、とらえることができない。それを作品に出しています。
タンの作品が出来上がっていくプロセスをみると、イメージを出したときの精度がはっきりしています。だからこそスケッチ1枚でも、美術館での鑑賞に堪えうる作品なんだろうと思います。
成:続いては『ロスト・シング』です。
junaidaさん(右)と廣済堂・成澤さん(左)
j:『アライバル』より前の作品なんですね。鉛筆、アクリル、コラージュ、油彩といろいろ作風は違いますけど、根底に流れるまなざしがきちんとあって、表現したいものが表現できています。
成:コラージュといえば、自身の父が使っていたノートを貼っている作品もありますね。
j:これも作品を見ると絶対適当にやったわけではないですよね。明らかに完璧主義。だけど完璧にやれる人ってなかなかいない。満足するまでやったというのが伝わってきます。
成:次は『エリック』のコーナーにやってきました。
j:『エリック』はキャラクターとしてつくり上げられてますよね。イメージに近い造形にするための、背景の計算といったさじ加減がたまりません。自分の中での選択を積み重ねたのだと思います。
成:タンは数日前のインスタグラムの投稿で『エリック』のスケッチを紹介していますが、明らかに作りかけです。つまりここにあるスケッチはスケッチとしての最終段階で、さらに原画があることが分かります。
j:『エリック』は原画も小さいですね。世界のとらえ方に合わせてあるかのようで。作品によって変えてあるんでしょう。②へつづきます
junaida氏
1978年生まれ。画家、イラストレーター、絵本作家。ファンタジーとノスタルジーが交錯する風景を、優れた作画力と物語性で描き出す。
国内外の個展や展覧会での作品発表、絵本出版など多岐にわたる活動を行っている。
最新絵本『の』が11月6日に刊行予定。