泉屋博古館にて開催中の「開館60周年記念名品展Ⅱ 泉屋博古#住友コレクションの原点」では、同館コレクションを代表する名品が一堂に展示されています。
関連イベントとして、毎週水曜日、15時から講堂にて学芸員によるスライドトークを行っています。前回に引き続き、11月18日に行われた【中国文房具と中国書画】についてのスライドトークを一部レポートいたします。
※当初ギャラリートークの予定でしたが感染症予防対策のため、講堂でのスライドトークに変更となりました。
開催報告④では中国書画についての解説をまとめました。
竹嶋:当館の中国書画コレクションは明王朝から清に移り変わる時期(16世紀末~17世紀初)のものが多く、当時は滅びゆく明に忠義を尽くした遺民と呼ばれる人たちが世俗を離れ、変わっていく世情に苦悩していた時代です。ご紹介する3人の画家たちもその苦しみを感じさせる作品を残しています。
●重要文化財《安晩帖》八大山人 中国 清・康熙33年(1694)
菊鶉図
この画帖には、視線の定まらない小さな黒目を持つ動物がいくつか登場します。何を見つめているかわからず、鑑賞者は不安を感じるかもしれません。後期では寄り添いあう鶉の図を展示しています。これは友人にあてたもので、迫りくる岩の陰でぎゅっと寄り添いあう姿はどこか自分たちの境遇を描いているようです。
モノクロに見えますが、さりげない着彩もされており、八大山人の美しい墨技と共にお楽しみください。
●重要文化財《黄山八勝画冊》石濤 中国 清(17世紀)
先人に倣わず、自分オリジナルの独創的な画風を打ちたてることを主張した画家ですが、この黄山を生涯にわたる師と友としたといわれています。その黄山にかかる霧のわずかな晴れ間から岩崖が姿を現した瞬間をパステルカラーの着彩で見事に表現しています。こうした色彩の感覚が、西洋で印象派が誕生するはるか前に絵画のなかで実現されていたことは驚くほかありません。
●《竹岸蘆浦図巻》漸江 中国 清・順治9年(1652)
版画のような細かく繊細緻密な筆さばきが特徴です。細かな線によって、風の存在をも感じられます。もう一つの特徴は、岩の描き方です。パリパリと剥がれ落ちそうな、まるでガラスのような描き方をしています。
他にも、時代ははるかにさかのぼりますが、南宋の時代に描かれた国宝の《秋野牧牛図》が茶の湯道具のコーナーにかかっています。日本のお茶という文化の中で鑑賞されてきた中国の作品も味わってみてください。
【今後の予定】 ・水曜日のギャラリー・トーク |