破損した壺
壺の亀裂は人為的なもの。素地土は蛙目(がいろめ)系の白土と自宅裏山で採取した原土。
双方を相互に繋いだ粘土紐を錬り付け、土の軟らかさを確認しつつ、素地の
厚みに変化を加え成形。焼成中に薄い部分が亀裂となり破損してゆく。
時空
平成30
高(H)75.3×幅(W)60.0×奥行(D)34.2
個人蔵
陶片がひっつき、底を失う程に大破した大壺。そして大壺からは、一筋の棒が弓なりに伸びてゆく。
人為と炎がせめぎあう焼成の凄まじさ、創造と破壊そして再生を繰り返す自然のダイナミズムを表現した作品だ。
壮大な時空のなかに、〈やきもの〉を見い出しながら、作者の宇宙観が空間のなかに紡ぎだされてゆく。
大地と生命をテーマに、長年にわたり多種多彩なインスタレーションを発表してきたが、本作では薪窯焼成の取り組みに新機軸を示す。
大物轆轤の中心をずらして成形された、揺らぎのフォルムから生みだされる新たな時空間。その姿には信楽焼を育んできた大地から、新たな生命を再生してゆく、作者の造形思考と精神性が体現されている。
奥田博土 OKUDA, Hiromu 1949 滋賀県甲賀市信楽町生まれ 1993 滋賀県立陶芸の森創作研修館ゲストアーティスト-'02 1989 アジアン・カルチュラル・カウンシルの助成を得て、アーチブレイ財団(アメリカ・モンタナ州)で滞在制作 2000 国際陶芸シンポジウム(ハンガリー・ケチケメート)ゲストアーティスト 2002 世界陶彫展(台湾/台北県立鶯歌陶磁博物館)ゲストアーティストとして、ワークショップをおこなう 2008 全米陶芸教育者会議(アメリカ・ペンシルヴァニア州)メインゲストアーティスト 2016 国立台湾工芸研究発展中心台北当代工芸設計ゲストアーティスト、レクチャーとワークショップをおこなう |