古谷道生 -深淵な宇宙、悠大なロマン-

古谷道生 -深淵な宇宙、悠大なロマン-

 

悠大なロマンを焼締めに

 


極北
平成4
左から時計回り順に
高39.0×径42.2/高31.0×径32.4/
高31.0×径32.0/高30.0×径31.8/
高23.5×径26.8/高13.3×径14.3/
高12.6×径12.7/高12.8×径12.5/
高10.9×径10.8/高11.0×径11.8/
高8.8×径10.3
滋賀県立陶芸の森 陶芸館

 

 

 

「ある日、なにかにとりつかれたように、いろいろなやきものに触れてみたくなり、自転車で予定のない無銭旅行に出発しました。

 有名な陶芸家、陶業地の職人さん、いろいろな方々との出会いの中から自分の生まれ育った信楽のやきものに大きなロマンを持つようになりました。」

 ◎古谷道生『穴窯-築窯と焼成-』理工学社(1994)


極寒の夜空に揺らめく幻想的なオーロラ。自然現象が生みだす、その神秘的な美しさを丸いフォルムをもつ大小の壺で表現した作品である。

緋色やビードロそして焦げなどがみせる多彩な景色に、和紙を用いてつくりだされた皺のある質感。個々に焼肌の表情が異なる球体が相互に関わりながら、空間に深淵な宇宙のイメージを導きだしてゆく。

従来にはないインスタレーションで、新境地を切り拓いた本作は、長年の穴窯研究で信楽・伊賀の作風を自家薬籠中にした、作者の自在な作陶技術を示すものだ。

悠大なロマンを感じさせるその姿は、今もなお人々を魅了してやまない。

作者の作陶精神と技術は、新たな可能性を探求する信楽作家に受け継がれている。

 

古谷道生

FURUTANI, Michio

1946 滋賀県甲賀市信楽町生まれ

1964 滋賀県立甲南高等学校窯業科卒業-京都府陶工訓練所、内田クラフト研究所に入所

1968 ロクロの賃引きのアルバイトをしながら自転車で国内の陶業地を旅する

1970 穴窯を信楽町神山に築窯し独立

1981 『窯から見た焼物』(共著)工芸出版を出版

1994 『穴窯 -築窯と焼成-』理工学社を出版

2000 7月19日逝去(享年54歳)