エッジの効いたフォルム
成形は手捻りと叩きがベースとなる。まず、手捻りで矩形に胴部分から底部に向かって、面を叩き締めながら、立ち上げた後に上下を反転。
今度は胴部分から口縁部に向けて面を叩き締め、全体の形を整えながらフォルムをつくりだしてゆく。
信楽花器〈尖〉
令和元
高34.5×幅56.3×奥行42.6×底14.9・14.0
個人蔵
刀剣の刃先のように鋭い、エッジの効いたフォルムが放つ緊張感と存在感。
そこには古陶信楽に例えられるような一般的なイメージ、いわゆる穏やかさや大らかさはない。
それとは対照的に、シャープな線と面は焼肌に多彩な表情をつくりだす。堅牢な構造物が朽ちてゆくような、本作に認められる情景は、景色に相応しい情趣を紡ぎだしている。
古陶信楽の焼締めを、現代的な視点から翻案し再構築してゆく。こうした作者の造形思考は、海外での作陶経験が影響しているのかもしれない。
同じフォルムで織部釉や化粧掛けを試みるなど、作者の作陶は非常に実験的である。
幅広い角度から検証してゆく作者の姿に、信楽の現代性と未来像が垣間見える。
SUGIMOTO, Yuu 1979 愛知県生まれ 1995 古谷製陶所(信楽)に入社、古谷信男氏に師事 2005 独立、佐伯健剛氏(京都)に随行して、パプアニューギニアに赴き現地で作陶 2006 ワーキングホリデーに参加、カナダ・アメリカ・メキシコで見聞を広める 2007 帰国、本格的な作陶生活に入る 2013 新たに薪窯を築窯 |