【担当学芸員寄稿】川端龍子と瓢亭

【担当学芸員寄稿】川端龍子と瓢亭

「堂本印象美術館に川端龍子がやってくる―圧倒的迫力の日本画の世界―」担当学芸員の松尾敦子さんより、本展の見どころ解説を頂きました。
3回に分けてご紹介します。
(※本記事は京都新聞11月9日(土)夕刊 読者とつながる夕刊版からの再録です)


東京で活躍した日本画家、川端龍子の展覧会が先日開幕した。

龍子の没後、京都の美術館における初の回顧展でもあり、京都を題材にした作品を数多く集めている。

「佳人好在」は、老舗料亭・瓢亭に取材した作品。
暗い茶室のなかに、膳の料理が、外光を受けてほのかに浮かび、谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』を思いおこさせる。

展覧会準備に当たり、十四代主人の髙橋英一さんへの取材が叶った。
画面左に描かれているカワセミについて、「今でも庭にやってきて、池の小魚を捕る実演をお客様に見せてくれます」と、にこやかに語られたのが印象的だ。

作品の舞台となった茶室くずやは、瓢亭のなかで最も古い建築で、芸術家や文豪たちに愛されてきた。
94年前に描かれた作品であるが、室内も庭も描かれた時と同じ風情を保っている。

寄稿:京都府立堂本印象美術館 松尾敦子学芸員


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