【堂本印象旧蔵の仏像をめぐって】③阿弥陀如来坐像

【堂本印象旧蔵の仏像をめぐって】③阿弥陀如来坐像

6/2(日)、「堂本印象 ほとけを描く ほとけを愛でる」の関連イベントとして、講演会「堂本印象旧蔵の仏像をめぐって」が開催されました。
講師は仏教美術が専門の京都市立芸術大学教授・礪波恵昭先生
本展では、堂本印象が自ら収集した仏像も展示されています。講演会では、出品作の仏像の特徴についての解説されました。
ここでは講演会の内容から一部抜粋し、印象コレクションの仏像についてご紹介します。


講演会では様々な仏像の画像を比較しながら解説が行われました。


【堂本印象所蔵の仏像 ③阿弥陀如来坐像(あみだにょらいざぞう)】

この像は、螺髪(らほつ・くるくると丸まった髪の毛)や肉髻相(にっけいそう・頭頂部の盛り上がり)を備えており、
さらに阿弥陀如来を象徴する印相(仏の手指の形)・来迎印を結んでいることから如来の中の阿弥陀如来像であることが分かります。

この像には以下のような特徴が見られます。

・引き締まった肉付き

・眼を水晶玉であらわす「玉眼」技法を用いた、厳しめの表情

・身体の肉付きがよくわかる薄手の衣

・衣のひだの流れが統一されておらず写実的

 →鎌倉時代前期の仏像彫刻の典型的な写実様式


・髪の生え際が、顔の中央部分でやや下がり気味になっている

・肉髻相の盛り上がりが低い

 →十三世紀前半に活躍した仏師・運慶やその長男の仏師・湛慶の流派「慶派」の作例に見られる様式 

 

このことから、この像は十三世紀前半(鎌倉時代)に作られたものだと考えられます。
作者を特定することはできませんが、慶派の様式をよく学んだ仏師によって作られたものであることは確かです。
この時期の様式を色濃く残すこの像は、日本の彫刻史上、重要な作例であるといえるでしょう。

 

★印象と阿弥陀如来坐像

像高69.5cmと、個人で所有するには大きく感じる像ですが、
印象は自宅の床の間に飾って、この像の前で寝ていたんだとか。

印象が本像を飾っていた床の間。
講演会は、まさにこの床の間のある部屋で行われました。


印象コレクションの仏像を展示するのは今回が初の機会!
また展覧会会場では、より詳細な作品解説を配布しておりますので是非お越しください。