国際博物館会議(ICOM)京都大会開催記念 原田マハさん講演会『風神雷神 パリへ行く』を開催しました!

国際博物館会議(ICOM)京都大会開催記念 原田マハさん講演会『風神雷神 パリへ行く』を開催しました!


このほど建仁寺で俵屋宗達の「風神雷神図屏風」(複製)を背景に、国際博物館会議(ICOM)京都大会開催記念 原田マハさん講演会『風神雷神 パリへ行く』を開催しました!

時代小説「風神雷神」を京都新聞に連載した作家の原田マハさんが、国際博物館会議(ICOM)京都大会が来年9月に開催されること、日仏友好160年記念「ジャポニスム2018」において、パリで開催の「京都の宝―琳派300年の創造」展に、宗達筆「風神雷神図屏風」(国宝・建仁寺蔵)が出品されることを記念した講演会を実施しました。

以下は講演会の内容をまとめたものです(2018年10月20日付の京都新聞で紹介しました)
 



2016年11月から18年3月まで、本紙朝刊に小説「風神雷神」を連載した原田マハさん。主人公・俵屋宗達が描いたとされる国宝の風神雷神図屏風(びょうぶ)が10月26日から、パリ市立チェルヌスキ美術館で開催の「京都の宝―琳派300年の創造」展に出品される。14日に東山区の建仁寺で開かれた記念講演会では、原田さんが物語の生まれた背景を語った。

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日本美術は専門ではないが、生涯が全く知られていない謎の画家・宗達には注目していた。「京都新聞で京都を舞台に書かないか」との話に、書くなら宗達だと思った。
時代小説は初めてだったが、宗達の生きた安土桃山時代は戦国と江戸に挟まれており、その前後に日本を代表する文化や芸術家が生まれ、天正遣欧少年使節や南蛮文化なども興味深い。
細見良行・細見美術館(京都市左京区)館長の「バチカンにあるシスティーナ礼拝堂のキリスト像は風神雷神に似ている」という言葉がヒントになり、宗達が遣欧少年使節団の一員としてバチカンに渡る物語を思いついた。
世界に目を向けるとこの時期はルネサンス美術からバロックへの移行期。バロック絵画を担う画家カラバッジョが、遣欧少年使節がイタリアを訪ねた年にミラノにいたという史実に着目し、宗達がカラバッジョに会う設定をつくり出した。
12カ月のつもりが18カ月の長期連載となった。書き上げたときはパリで、すべて出し切った気分で街を歩いたのを覚えている。そのパリに宗達の「風神雷神図屏風」が展示されることはうれしく、京都の皆さんと一緒に送り出したいと思う。

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後半では細見良行・細見美術館長とのトークがあった。風神雷神図屏風の魅力について細見館長は「二神を対角線上に描いた幾何学的な構図や躍動感」を挙げ、原田さんは「枠に収まらない描き方。はみ出した部分を切ったことで無限の空間を感じさせる」と指摘した。
講演後の原田さんに「風神雷神」執筆前後で京都のとらえ方が変わったかを尋ねると「世界に置いた京都を意識するようになった。京都は本来、世界に影響を与える力を持っていて、それがヨーロッパとの交流で世界に知られるようになったと思う」と話した。京都を舞台にまた書きたいかとの問いには「永遠に片思いしている街。機会があれば挑戦したい」と答えた。(林屋祐子)