⑤瀬戸黒茶碗(大萱古窯跡群)

⑤瀬戸黒茶碗(大萱古窯跡群)

瀬戸黒茶碗(せとぐろちゃわん) 岐阜県可児市 大萱古窯跡群 中世 可児市教育委員会 所蔵

 豊臣秀吉が天下統一を果たした頃、美濃国(現在の岐阜県)で新たな焼き物が生まれました。釉薬によって、黄色や黒、緑、青、白といったさまざま色彩を表現することに成功したこの器は、茶の湯の浸透とともに文化人の間に広がり、商人や武将など多くの人を魅了しました。美濃桃山陶と呼ばれるこの焼き物の代表的な生産地が、大萱古窯跡群です。

 この古窯跡群は牟田洞(むたぼら)古窯跡や窯下(かました)古窯跡、弥七田(やしちだ)古窯跡の3カ所の窯跡からなり、牟田洞古窯跡からは美濃桃山陶の魅力に引き寄せられ、この地に窯を築いた荒川豊蔵(後の人間国宝)が志野筍絵(しのたけのこえ)陶片を発見したことで広く知られています。

 今回の展示品の中にも、白い釉薬の上に筆で絵を描いた志野茶碗や、瀬戸黒(せとぐろ)と呼ばれる独特の製法でつくられた漆黒の茶碗、ゆがんだ形に多彩な色彩による幾何学模様や花鳥風月などの絵付けが特徴的な織部(おりべ)などがあります。

 戦国時代を生きた武将達が愛した焼き物を見に来ませんか?

(文化庁記念物課 文化財調査官 近江俊秀)
 

「発掘された日本列島2016」展は9月11日(日)まで、大津市御陵町の大津市歴史博物館で開催。月曜休館。問い合わせは同博物館=電話077―521―2100へ。