鬼瓦(おにがわら) 奈良県奈良市 中山瓦窯跡 古代 奈良文化財研究所 所蔵
恐ろしい形相で睨みをきかせるこの瓦は、奈良県奈良市にある中山瓦窯跡(かわらがまあと)から出土した鬼瓦です。中山瓦窯跡は、奈良県と京都府の境に広がる平城山(ならやま)丘陵に築かれた瓦窯群、史跡奈良山瓦窯跡の一つで、平城宮(710~784年)の各建物に瓦を供給した官窯として知られています。
鬼瓦とは屋根の棟端(むなはし)を飾るとともに雨風から守るための瓦です。日本では概ね8世紀の奈良時代以降になると、平城宮や国の保護を受けた南都七大寺をはじめ各地で迫力ある鬼面文鬼瓦が用いられるようになります。
この瓦、まさに鬼の形相ですが、これこそ鬼瓦が使われた理由のひとつで、「辟邪(へきじゃ)」、つまり邪悪なものから建物を守るために使用されたと考えられています。8世紀以前には蓮の華など軒先の瓦にも使用されている文様を飾る鬼瓦が一般的ですが、一転して鬼面文(きめんもん)が採用された背景には、単に装飾的な意味を超えた思想的変化までもがうかがえるようです。
(文化庁記念物課 文部科学技官 森先一貴)
「発掘された日本列島2016」展は9月11日(日)まで、大津市御陵町の大津市歴史博物館で開催。月曜休館。問い合わせは同博物館=電話077―521―2100へ。