②板状鉄斧(河原口坊中遺跡)

②板状鉄斧(河原口坊中遺跡)

板状鉄斧(ばんじょうてっぷ) 神奈川県海老名市 河原口坊中遺跡 弥生時代中期~後期 (公財)かながわ考古学財団 所蔵

 

 鉄器は弥生時代に使用が始まりました。鉄は「くろがね」と呼ばれるように漆黒色で、その輝きは石にはない異質のものとして人々の目に映ったことでしょう。弥生時代に鉄を生産する技術はありませんでした。しがたって、鉄器あるいは鉄素材は朝鮮半島のどこかで入手し、北部九州や近畿などを経由し関東・東北まで流通させる広域のネットワークが出来上がっていたと考えられています。

 この鉄斧は、はるばる1200キロを超える旅をしてたどり着いてきたのです。これをみた時、人々は素晴らしい道具を入手した喜びと、想像もつかない「彼の地」に思いを馳せたことでしょう。鉄斧は全長28.5センチ、幅3.4センチ、厚さ1.3センチです。30センチに迫る大きさは関東初とのことですが、西日本を含めても最大級です。

 ほとんど錆びていないことから、両刃で非常に鋭利に研がれていることを皆さんの目で直に観察していただけます。弥生時代の人々を魅了したであろう鉄斧を見ながら、その社会に想いをめぐらせてみませんか。

(文化庁記念物課 主任文化財調査官 禰冝田佳男)

 

「発掘された日本列島2016」展は9月11日(日)まで、大津市御陵町の大津市歴史博物館で開催。月曜休館。問い合わせは同博物館=電話077―521―2100へ。