新潟県糸魚川市 六反田南遺跡 縄文時代中期 (公財)新潟県埋蔵文化財調査事業団 所蔵
日本を代表する縄文土器といえば火焔(かえん)型土器です。不安定に見えるほど上半分が大きな器形と、火が燃えあがるような口縁部。火焔型土器は縄文時代中期、新潟県の信濃川上・中流域を中心に分布します。
この時期にもう二つ、造形的に優れた縄文土器が存在します。一つは、長野県北部から群馬県にかけて分布する焼町(やけまち)土器。さまざまな突起と細くて力強い隆起文によって描かれる複雑な曲線文が特徴です。そしてもう一つ、石川県・富山県から新潟県西部にかけて分布する、この六反田南遺跡からも出土している上山田(かみやまだ)・天神山式土器です。
この土器は、竹管や貝殻によって細かく刻まれた隆起文が渦を巻いたり、複雑に絡み合ったりします。縄文人が何をモチーフにしてこの文様を描いたか。そして、土器という円筒状の丸い側面に、どうやって計画的に美しく描いたか。縄文土器には失敗作がないだけに、縄文人の技術の高さや文様への特別な意識を垣間見ることができます。
(文化庁記念物課 文化財調査官 水ノ江和同)
「発掘された日本列島2016」展は9月11日(日)まで、大津市御陵町の大津市歴史博物館で開催。月曜休館。問い合わせは同博物館=電話077―521―2100へ。