触れることを許されたのは龍光院代々の和尚のみ
本展にて展示されている、龍光院の曜変天目。
世界に三碗しかない国宝曜変天目のうち、最も目にする機会が少なく、謎に満ちていると言われています。
天目形で姿は端正、高台の作りも極めて丁寧です。他の二碗に比べて高台畳付(たたみつき)の幅が細く繊細さが感じられます。
国宝 曜変天目 南宋時代 12-13世紀 大徳寺龍光院蔵
本碗の光彩は一見ひかえめな印象を受けますが、手の中で間近に見ると銀河のごとき光彩が一瞬にして浮かび上がってきます。
小堀月浦和尚の手の中の曜変天目
江月の父、津田宗及が所持していた天王寺屋伝来の名宝のひとつで、宗及が父の菩提を弔うために創建した堺の大通庵(だいつうあん)から、江月が住持する龍光院に入り、四百年余りの時を経て今に伝わります。
江月和尚から脈々と受け継がれる禅の息吹を伝える本碗との出会いは文字通り「一期一会」といえるでしょう。
歴史上「曜変天目」と認識された茶碗は、国宝の三碗以外にもいくつか現存し、MIHO MUSEUM所蔵の耀変天目(重要文化財)もそのひとつです。
重要文化財 耀変天目 南宋時代 12-13世紀 MIHO MUSEUM蔵
国宝の三碗の場合、結晶が数点集まった状態ですが、この耀変は斑紋がそれぞれ独立した状態で発色し、耀変独特の輝きを持つ斑紋が現れています。
現在、MIHO MUSEUM南館にて特別展示中です。
国宝、重要文化財二つの曜変天目が同時に見られるのは今だけ!
「曜変天目を前にした時、それを生み出した陶工たちや守り伝えてきた多くの人々の思いの凝縮された八百年余りの時を経て、今そこに存在することの「奇跡」に畏敬の念を禁じ得ない。曜変天目は人類史上、他に類を見ない「奇跡の器」なのである」 |