特別展「聖徳太子-時空をつなぐものがたり」
ただいま中之島香雪美術館で開催中の「聖徳太子展-時空をつなぐものがたり-」の鑑賞レポートをお届けします。
「聖徳太子は、日本という国の礎を築いた優れた政治家として、また、日本への仏教の導入を牽引した人物として、いつの時代も幅広い人々から敬愛されてきました。最も有名な日本人と言っても過言ではありません。ただ、その人間像については現在も多くの議論があり、その謎がなおさら人々を惹きつけています。」 本展公式図録より
聖徳太子は日本という国の礎を築き、仏教の定着を導いた人物です。
没後たちまち信仰されるようになり、人々の信仰心が太子の一生を飾り始めました。
様々な伝説や逸話が語られ、それに伴い様々な作品が形作られ、さらなる信仰へと繋がっていきました。
今回の展示は、様々な伝説に彩られた太子への信仰が紡ぐものがたりを、多くの作品をもって辿っていきます。
今回の目玉「聖徳太子像」
手前に見えるのが、今回修理後初公開の「聖徳太子像」(鎌倉時代13~14世紀 香雪美術館蔵)
今回、修理後初めての公開となる「聖徳太子像」は、損傷が酷い状態でしたが、全面的な修理を行い、画面が蘇りました。
本図は十六歳の時、父である用明天皇の病気平癒を祈願し、柄香炉(えごうろ)を持つ聖徳太子の姿が描かれてます。成人前の聖徳太子は美しく、どこか中性的にも感じられます。
また今回の修復により、聖徳太子の背後には、よく見ると水墨山水図が描かれていることが分かりました。
ぜひ展示に足を運び、実際にご覧になってみてください。
右から香雪美術館蔵、弘川寺(大阪)蔵、西方寺(岐阜)蔵のもの。
よく似た姿の聖徳太子像が3幅並べられていますが、どれも太子は赤い袍衣(ほうえ)を着け、その上に袈裟、横被と呼ばれる布をまとい、柄香炉(えごうろ)を持っています。
父である用明天皇の病の快癒を祈るこの種の太子像は、孝養像と称されてきました。
次に注目したいのが「聖徳太子絵伝」です。
聖徳太子絵伝には、それぞれ聖徳太子の伝記における少年期、壮年期、最晩年の各場面が描かれています。
手前の二組が香雪美術館蔵のもの。
火災に遭った痕の残る第9幅
この作品は火災に遭ったとみられ、画面から表装にいたるまで傷みの激しい作品でしたが2015年春に修理が始まり、三年をかけて解体修理が行われました。香雪美術館が所蔵する聖徳太子絵伝は「第三幅」「第七幅」「第九幅」の3幅ですが、三幅そろっての公開はこの展覧会が初めてとなります。
また、これとそっくりな絵伝が愛知県の本證寺にも所蔵されており、その絵伝は9幅1揃いで(現在、10幅1揃いで本證寺に伝えられていますが、そのうちの1幅は善光寺如来絵伝が混ざってしまったものです。)構成されることから、香雪美術館の絵伝ももとは同じ9幅だったと考えられています。
その全9幅のうち3幅を公益財団法人香雪美術館が、残りの6幅のうち5幅はアメリカのボストン美術館が所蔵しています。
そして最後の1幅ですが、現在も行方がわかっていません。焼失したという可能性もありますが、もし現存するならば今もどこかで再会の時を待っているのかもしれません。
聖徳太子絵伝
徳川家伝来
四巻(10巻のうち)
鎌倉時代 14世紀
個人
重要文化財
細字法華経
一巻
紙本墨書
平安時代 11世紀
大阪 四天王寺
細かな字がびっしりと書き込まれているのがわかります。
通常は7~8巻で書写される法華経の内容が、なんとたった1巻に全て記されています。
聖徳太子の前世は、中国で活躍した慧思という高僧だったと伝えられており、
その時から使用していた法華経は、小さな文字で書かれた一巻本だったといいいます。
この「細字法華経」は、聖徳太子信仰の中心である四天王寺に伝来しました。
展覧会情報
特別展「聖徳太子-時空をつなぐものがたり」
開 催 期 間 | 2020年10月31日(土)~2020年12月13日(日) |
---|---|
時 間 |
午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休 館 日 |
月曜日(祝日の場合は翌火曜日) |
会 場 |
中之島香雪美術館 |
料 金 | 一般1200(1000)円、高大生700(500)円、小中生400(200)円 ※( )内は前売り・20名以上の団体料金 |
お 問 合 せ | 06-6210-3766 |
主 催 / 後 援 な ど |
主催:公益財団法人 香雪美術館、文化庁、独立行政法人 日本芸術文化振興会 |