【オススメのアートスポット紹介!vol.7】KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2018 堀川御池ギャラリー1F「森田具海 Sanrizuka-Then and Nowー」(後編)

【オススメのアートスポット紹介!vol.7】KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2018 堀川御池ギャラリー1F「森田具海 Sanrizuka-Then and Nowー」(後編)

現在、京都市内各所で展開されているKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭2018のメイン会場のひとつ、堀川御池ギャラリー1階の「Sanrizuka-Then and Now-」の会場を訪ね、京都市山科区生まれの写真家の森田具海(もりた ともみ)氏にお話をうかがいました。
水俣と足尾銅山という公害が発生した地域を歩き、現在の風景を写し取った「2つの川」で昨年のKG+(注1)アワードを受賞し、注目される森田氏。
今回は、2年前に撮影・発表した、1960年代後半に成田空港建設反対闘争の場となった千葉県・三里塚を大判カメラで再度捉えた新作を展示中です。
[前編はコチラから]

(以下後編)

ー 今回、金網のフェンスに作品が展示されていることに、入場者はまず驚くと思いますが、どのような狙いがあったのでしょう?
今回の展覧会のキュレーターとのやり取りの中で「フェンス」が出てきました。
現地の撮影時には、もちろん実際のフェンスの中には入れません。これらの「立ち入り禁止区画」を作る構造物に違和感を持っていました。
また、白い壁で展示するというクラシックな写真の見せ方が作る、展示空間での経験と外の世界とのつながりを遮断してしまうことに対する懸念もありました。
ギャラリーの大きな窓を閉じず、外から見えるようにしているのもそのためです。
ただ、写真同様、「フェンス」の持つ強いイメージをどうしたらよいかは議論しました。高すぎても低すぎてもいけない。

シンプルでバランスの良い展示会場になるように気を配りました。



森田具海氏(会場内で撮影)

ー 壁一面の言葉のインスタレーションも、写真作品自体の醸し出す静けさに対して、直接的に迫ってくる印象がありました。
当時の写真資料から、闘争していた人たちの幟旗などの言葉が気になり、抜き出しました。
これらの言葉が持つ形が、見る方にとっての展覧会への入り口になるのではないかと考えました。
ただ白い壁に黒い文字だと、その意味や印象が強すぎるので、白い文字にして、写真と言葉との距離感も持たせてみました。
本来、写真作品は何の説明がなくても見る人に訴えるものがなければならないのかもしれません。
でも、人々に開かれたイメージを作ることがまずは大切だと思っています。
また記録をベースとした写真に限らず、現代美術の分野での写真も、文章や説明が入ることへの抵抗が作る側も見る側にとっても少ないように見受けられます。
発表する分野や媒体によっても、写真だけで見せることへの必要性が異なってきています。


会場壁面の様子

ー ちなみにデジタルのカメラを使用されたりしますか?
デジタルカメラは、撮影してすぐに確認ができるメリットがあります。
ただ、何度もその場で確認するうちに最初のイメージからずれていくことがあります。
フィルムのカメラは、撮影後にしか見ることができず、写真の撮り方がブレないので、そちらを使用しています。
今回、使用している大判カメラという機材は重たくて、一枚撮るのに時間もお金もかかります。
その分、場所さえ決めることができれば、あとはゆっくり時間をかけて落ち着いて撮ることができます。
写真を見る時も、記録を重視した表現による古典的な写真から感銘を受けることが多いです。京都も古典、伝統を尊重する街ですよね。
でも日本全体で見ると、記憶は風化していき、新しいものがよいとされる時代の感覚に慣れすぎているように思えます。
広告などのデジタルで加工された視覚的に派手で強く、刺激的で面白いイメージの画像や映像が増え続けるなか、記録やドキュメントとしての写真鑑賞の体験が少なくなっているのではないでしょうか。
写真は「時間の芸術」で、見ることは「世界を理解する方法」の一つだと思っています。
リアリティがないゆえに歴史の記憶と、今の自分たちの思いとのつながりづらさを感じてしまいがちですが、その歴史の大きな流れの中に自分がいる、というふうにとらえることで生きやすくもなるのではないでしょうか。
これからも過去から未来を意識しながら作品を作ってゆきたいと思っています。


2018Naoyuki Ogino


◆会 場 堀川御池ギャラリー 1F(京都市中京区押小油路町238-1)
・会 期 開催中 5月13日(日)まで
・時 間 午前11時~午後7時
・休館日 月曜日
・料 金 一般600円、大学・高校・専門生500円 ※中学生以下無料
・問合せ KYOTOGRAPHIE事務局 電話075-708-7108
 ★KYOTOGRAPHIEその他プログラムについては公式HPをご確認ください。
  HP https://www.kyotographie.jp/

 

[お知らせ]
5月5日(土)より、ドキュメンタリー映画「三里塚のイカロス」が京都シネマで公開されます。
公開初日の15時15分の回の上映終了後に代島治彦監督の舞台挨拶があり、特別ゲストとして森田具海氏も登壇。
ぜひこの機会に映画にもご注目ください。
詳細は京都シネマHPにてご確認ください
http://www.kyotocinema.jp/index.php

 


KYOTOGRAPHIEについて
 2013年以来毎年春に京都で開催され、回を重ねるごとに好評を博し、これまでに約38万人の来場者を迎えました。
今回も15のメインプログラムのほか関連プログラム、イベントも多数開催されます。
詳細はコチラ

そのほかプログラムのご案内
メインプログラム
ローレン・グリーンフィールド GENERATION WEALTH」(京都新聞ビル印刷工場跡(B1F))
ジャン=ポール・グード So Far So Goude」(京都文化博物館)

 関連プログラム
蜷川実花写真展 UTAGE 京都花街の夢 KYOTO DREAMS of KAGAI」(美術館「えき」KYOTO)
永遠の少年、ラルティーグ―写真は魔法だ!―」(細見美術館)
 立命館大学国際平和ミュージアム2018年度春季特別展「ヤズディの祈り―林典子写真展―」(立命館大学国際平和ミュージアム)