第1展示室には、3代目以降の作品を展示しています。3代目・道入の作品を見てみましょう。
道入は通称「ノンコウ」としても親しまれています。彼の作陶の根底には“モダニズム”が根付いています。とてもモダンです。彼の生きた時代は、まだ利休さんのお茶を知っている人も残っている時代。そういう時代の中で、これほどまでに革新的でアバンギャルドな作品を生み出せたということがスゴイと思うのです。
このような茶碗が生まれた背景には本阿弥光悦の存在が大きく影響しているのでは、と考えています。もともと本阿弥家は樂家から徒歩5分程度のところに建っており、光悦から「土を持ってきて欲しい」という趣旨の手紙が残るなど、交流がありました。光悦が57歳で鷹峯に光悦村を開いたとき、道入は16歳の青年。光悦は道入のことをとても可愛がり、年の差に関係なく親しく付き合っていたようです。
道入がスゴイのは、光悦と深い付き合いがあったにも関わらず、作品のフォルムなど影響を受けていないことです。長次郎に始まる樂家の伝統に寄り添いながら茶碗を作り続けました。しかし、光悦の影響を全く受けなかったといえばそうではないと考えます。それは作陶にかける精神に影響を受けていると思います。しっかりと時代を受け止め、新たなものを生み出していくエネルギーを吸収し、こういったモダンな作品を作り出していったのでしょう。
続いて、11代・慶入が生み出した作品「潮干」も見てみましょう。見込みに貝が貼り付けてあります。潮が引くと貝が現れる面白いつくりです。実はこの茶碗には様々な考え方が盛り込まれています。まず見込みに釉薬がかかっていません。これは砂浜の雰囲気を出すためと考えられます。また飲み終えたときに残る泡が海辺の潮の引いた感じを演出します。よく見ると、白い茶碗の中に、うっすらと青色がかっているのが分かります。これは飲む時期を意識してのことでしょう。浜辺を想像させる茶碗を使うとすると、5月もしくは6月、いわゆる初夏でしょうか。その時期は、新緑の綺麗な時期であります。新緑によく似合うよう、うっすら青みを加えたのでしょう。