今回の展覧会では、第3展示室に初代・長次郎の作品を中心に展示しています。
はじめの作品は二彩獅子(重要文化財)です。この獅子の腹部に「天正二年春 寵命 長次良造之」と書かれており、天正2年(1574)に長次郎の手により作られたことが分かります。この作品は、樂焼のルーツを語る上で欠かせないもののひとつです。よく見ると鼻の頭などに緑釉や透明釉が残っている部分があり、そのルーツを辿ると、中国・福建省の三彩釉に行き着きます。
このように力強く、動きがあり、多分に装飾的で、おそらく色彩豊かであったものを作っていた人が、その後に続く、変化も装飾性も削ぎ落としたお茶碗を作っているというのが面白い。そこには、おそらく利休さんの存在が大きく影響しているのでしょう。利休さんの精神や美意識を存分に吸収しながら変化をしていったのでしょう。
さて、この展示室には、長次郎を考える上で重要な2つの茶碗を展示しています。ひとつは「面影」、もうひとつは「万代屋黒」です。
「面影」は利休さんの孫・元伯宗旦の弟子であった山田宗徧により名づけられました。石川自安の書付には、長次郎七種のひとつ「鉢開」に似ていることから、「面影」と名づけられたと書かれています。この作品は、胴の部分や口部にも動きをもっており、造形的に変化を多くもった作品です。一方で、「万代屋黒」は、丹精で変化を削ぎ、造形的変化が少ないものです。この「万代屋黒」は、利休さんの娘婿・万代屋宗安に伝わり、万代屋家の黒茶碗ということで「万代屋黒」と呼ばれるようになりました。
このタイプの異なる2つの茶碗の間には、それぞれ異なった趣があり、その幅の中で長次郎が存在していると考えることが大切なのです。