初日の9月21日(土)は、ショーン・タン作品の翻訳を多く手がける翻訳家・岸本佐知子さんをお招きし、ギャラリートークを開催しました!
当日はショーン・タンの日本語版を出版している河出書房新社の担当編集者・田中優子さんも一緒にお話しいただきました。
①からのつづきです
『エリック』は人間離れした小さい生き物が留学生として家にやってくるお話。
せっかく街を案内してあげても、名所よりも落ちているゴミに興味を示す変わり者です。
ここでも、2つの「はしっこ」が描かれていると岸本さんはいいます。
まず、エリックそのものが人間離れした姿であることの、マイノリティの描写。
そして、エリックが普通の人なら気にも留めないものに興味を持ち、そこに美を見出していること。
特に後者は、タン自身を描いているのではないかと推測します。
会場には、タンのアトリエのデスクを再現した空間もあります。
実際にオーストラリアの自宅を訪問したことがある田中さんによれば、かなり忠実とのこと。
壁に貼られているイラストは、東京展(ちひろ美術館・東京、2019年5月11日~7月28日開催)の会期中、タンによって次々と追加され、リアルタイムにアトリエから送られてきたものもあります。
「こんにちは!」とほほ笑むキャラクターなど、明らかに日本を意識したものも紛れこみ、作品と同様にじっくり見て楽しい展示です。
会場後半は、近年の作品が中心です。
人気の『セミ』では、セミのキャラクターを立体作品にしてから絵にするこだわりが明らかに。
「ズボンの裾のだぶつきが萌えポイントですね」と岸本さん。
まだ日本で出版されていない『内なる町から来た話(邦訳仮題)』を展示している一角は、これまでと変わって原画が大きくカラフルで見ごたえがあります。
田舎の風景をモチーフにすることが多かったタンの作品ですが、ここで描かれているのは無機質な都市の風景です。
今後の作風の変化にも期待したいですね。
『内なる町から来た話』より 2017年 ⒸShaun Tan
ギャラリートーク後に行われたサイン会では「次作も岸本さんの翻訳で読みたい!」というファンの方で列ができました。
岸本さん(左)と田中さん(右) フォトスポットの前で
「ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ」は10月14日(月・祝)まで美術館「えき」KYOTOで開催中です。