泉屋博古館にて開催中の「開館60周年記念名品展Ⅱ 泉屋博古#住友コレクションの原点」では、同館コレクションを代表する名品が一堂に展示されています。
関連イベントとして、毎週水曜日、15時から講堂にて学芸員によるスライドトークを行っています。今回は11月18日に行われた【中国文房具と中国書画】についてのスライドトークを一部レポートいたします。
※当初ギャラリートークの予定でしたが感染症予防対策のため、講堂でのスライドトークに変更となりました。
開催報告③では鑑賞者を中国文人の世界に誘う、美しい中国文房具についての解説を、紹介します。
竹嶋:「文房」とは中国の文人たちの書斎のことです。今回はその書斎の雰囲気を感じてもらうため、展示の棚をあえて高くしています。なぜなら中国は日本と違い椅子文化でした。その椅子の目線に合わせ、少し高めの飾り棚をあしらえました。そしてこの飾り棚の名前は「博古架(はくこか)」。当館の「泉屋博古館」という名前にもリンクしています。
(飾り棚のシルエット。現物は展示室にてお楽しみください。)
●鍍金魁星像 中国 明(17世紀)
こちらは文房の神様である魁星の像です。そもそも魁星とは、北斗七星の一番先頭に位置する、魁(さきがけ)の星です。その意味から、中国では官僚になるための試験である科挙を、首席で合格するために信仰を集める存在となります。このことが転じて、文房(=書斎)の神と呼ばれるようになったのです。右手に筆を持っていることも象徴的ですが、左手には斗を持っており、鬼が斗を持つ姿はまさに「魁」の漢字を表すのも洒落ていますね。文人の書斎には魁星像を描いた絵画作品など、何かしらのかたちで飾られていたと考えられますが、このような銅像が現存するのは非常に珍しいです。
小さい瓶のようなものがたくさん並んでいますが、こちらは鼻煙壺(びえんこ)という‟嗅ぎたばこ”の道具です。使い方は瓶の中にたばこの粉を入れ、蓋に付属する匙ですくい鼻穴につけるというものですが、一つ一つの造型にも注目してください。文人たちにとってこの鼻煙壺は単なるたばこを楽しむための道具だけでなく、デザインを自慢し合うものでもありました。だから、様々な形や色のものがあるのです。
また、文人たちは自然のエネルギーを書斎に満たしたいという願いから石を好んで書斎に持ち込みました。本展でも当時鑑賞の仕方として良いとされた穴の開いた《怪石》や、印鑑用の翡翠であるのにその美しさのあまり無刻のまま残されていると考えられる《翡翠》など様々な玉や石をご紹介しています。
ここで紹介したもの以外も、ぜひ展示室でじっくり見て、どのように使われていたのか、または自分ならどんなものを書斎に飾ろうか考えてみるのも楽しいですね。
【今後の予定】 ・水曜日のギャラリー・トーク |