「昔の人のデザインセンスって、結構イケてますよ。」

「昔の人のデザインセンスって、結構イケてますよ。」


「ぎをん 齋藤」は、江戸時代から続く京呉服の老舗。その7代目の現当主・齋藤貞一郎さんが収集した「古裂」は、きもの作りを生業とするプロの目にかなった逸品が揃っています。齋藤さんは、「古裂を見ていると、創作意欲が湧いてくる」とおっしゃいます。

古裂? 関心のない人からすれば、ただのボロ切れにすぎないでしょう。でも、少し興味をもって古裂を見たら、それはまさにタイムカプセル。昔の文化や歴史がみえてきます。

まずは、文様を楽しみましょう。昔の人のデザインセンスって、結構イケてますよ。もう少し興味がわけば、どうやって織ったのか、染めたのか、技術に目を向けてみましょう。現代人って進歩していると思いがちだけど、昔の人の技はすごい。何百年も昔の古裂が発するパワーを感じてください。(関西学院大学・河上繁樹教授)

<私のおススメ!>
大連珠鹿文錦(だいれんじゅしかもんにしき)
ソグド 7世紀

この錦は幅が細く、文様の全体像がわかりません。でも、これが「裂」のおもしろいところです。コンピューターで再現すると、丸い連珠文のなかに鹿が現れました。
首には、リボンをなびかせています。連珠文はペルシャ発祥で、真珠が連なった形です。古代ペルシャでは、真珠は天空の聖なる水(月の雫)から生まれる神聖なものと考えられました。リボンもペルシャの文様には、よく登場します。リボンは王権の象徴であると同時に、聖なるものをあらわします。
鹿の身体には山のような文様があったり、連珠文の間には宇宙人の顔のような不思議な文様が見えます。これは葡萄の木と思われますが、デフォルメがすごいです。古拙とでも呼ぶような、でも味わいがある。ペルシャの影響を受けたソグド(現在のタジキスタン)ならではの錦です。