「蘭島閣美術館コレクション 京の日本画家が描いた情景」注目作品①

「蘭島閣美術館コレクション 京の日本画家が描いた情景」注目作品①

日本の近現代絵画や地元ゆかりの作家の作品を数多く収集する蘭島閣美術館(広島県呉市下蒲刈)のコレクションより、京都を拠点に活動した作家の作品を紹介する展示「蘭島閣美術館コレクション 京の日本画家が描く情景」を堂本印象美術館で9月30日まで開催中です。ここでは同館学芸員の山田由希代さんより頂いたコメントと共に、出品作の一部を紹介します。
 


 

耳をピンと立て、元気いっぱいに動き出しそうな一頭のトラの子が描かれています。
大きくしっかりした手足は、これからどんどん大きくなっていく姿を伝えています。
頭から背中、尻尾にかけた丸み、生き生きした表情に動物画を得意とした作者山口華楊の愛情あふれる眼差しが感じられます。


 

作者は中国の風物地誌に造詣が深く、暢達な筆技と豪快な風格をあわせもつ橋本関雪。
古来、梟は幸運をもたらす鳥として、また知恵や武芸に関係する鳥として、よく画題とされてきました。本作品は、水墨を基本として、月を背景に竹林の縄張りを警備するかのように凝視する梟が描かれています。竹にとまり月光に照らされた梟からは孤高の品格が漂います。

 

 

赤色や薄紅色の花が咲く芥子のそばに三羽の鳩が描かれています。落ち着いた様子の中央の鳩は親鳥で、両側でくちばしを開き、羽を広げているのは小鳥たちでしょうか。春から初夏の穏やかな光景が画面を通して伝わります。作者は、明るい色彩を用いた格調高い花鳥画の世界を確立した上村松篁。黄色、黄緑色をベースに複雑に塗りこめられた背景には、余白を大切にした作者の思いが表れています。


 


本展では今回紹介した作品も含め、計26名の作家の32作品を展示中。

是非、堂本印象美術館へお越しください。