「今年の秋は櫻谷づくし!」特集vol.6 ~講演会「櫻谷遺愛の絵具からわかること」開催レポート~

泉屋博古館にて10月28日(土)~12月3日(日)まで好評開催中の「木島櫻谷―近代動物画の冒険」。
11月11日(土)に行われた講演会で「櫻谷遺愛の絵具からわかること」をテーマに、京都市立芸術大学准教授の高林弘実氏にお話いただきました。
講演会の様子

木島櫻谷は、大正2年に京都・衣笠の地に移り、生涯をこの地で過ごしました。現在は、邸宅は、公益財団法人櫻谷文庫として保存・公開されています。邸宅内には、膨大な資料とともに紙、墨、絵具、膠(にかわ)、筆、刷毛、絵皿といった画材類も保管されています。
櫻谷文庫 外観

「近代の日本画家たちは、新しい絵画を模索するなかで、それまで使われていなかった色材を積極的に取り入れたことが知られています。しかし、その研究はまだわずかで、どの時期にどのような絵具が使われるようになったのか全体像は明らかになっていません。そのなかで、櫻谷が遺した画材類は、近代日本画の様相を知る上で、貴重な資料なのです」と高林氏は話します。

現在、櫻谷文庫では京都市立芸術大学保存修復研究室および泉屋博古館と共同して、櫻谷の遺した画材の研究を進めています。調査はまだ始まったばかりですが、講演会では、色材がどのように保管されていたのかを中心に、調査の概要を紹介していただきました。

櫻谷文庫は、和館、洋館、画室の3つの建物に分かれています。「木島櫻谷―近代動物画の冒険」に合わせ、「木島櫻谷旧邸 特別公開」を開催しており、建物の内部まで見学することができます。

櫻谷文庫(右)和館(左)洋館
櫻谷文庫 画室
画材は、和館と洋館に分蔵されていました。色材の粉末が入ったガラス瓶やガラス管、紙包や革張りの絵具箱のほか、文箱や菓子の空き箱に収納されていました。その数は500点ちかくにのぼり、未開封のものから使用痕のあるもの、無造作に紙包をねじったものまで、状態もさまざま。粉末のなかには、筆の毛や塵が混入しているものもあり、使用後に戻した形跡もあったそうです。

櫻谷文庫 和館1階押入に収納された色材
「どちらかといえば無造作に収納され、明確な分類などは見出せませんでした。しかし、かえって櫻谷のおおらかさや制作現場の生々しさが伝わってきます。遺された色材を調べると、近代以前から使用されていた顔料に加え、近代に開発された岩絵具が含まれていることがわかりました。販売元・商品名・価格の記載があるものも遺されていました。新しい絵具を取り入れながら制作していた姿が窺えます。」と高林氏は話されました。

画家がどのような絵具を使っていたのか調べる際は手がかりを作品に求めることが多く、作品からは多くのことがわかります。しかし画家が混ぜたりしている可能性があるので、素材としての色材を知る上では、二次的な資料となるので、画家が使用していた当時のまま遺されていることはとても貴重なのだそうです。
会場には、画材の一部が展示されています。展覧会と合わせてお楽しみください!

展示会場の様子

次回は、同じく11月11日に開催されたワークショップ「櫻谷の描き方を追体験しよう」の様子をご紹介します!