8月31日、京都政経文化懇話会の8月例会がANAクラウンプラザホテル京都で開かれました。泉屋博古館学芸課長の実方葉子さんと京都文化博物館学芸員の植田彩芳子さんに、今秋、両館で展覧会が開かれる日本画家・木島櫻谷(このしまおうこく)の魅力についてお話しいただきました。
実方さんは、動物画の作品を映写しながら解説し、「櫻谷の動物画の写実に基づいた品格ある姿と優しく思慮深いまなざしに惹かれます」と説明しました。
日本初の公設展である文部省美術展覧会(文展)で日本画の最高賞を受けながら、夏目漱石に酷評されたエピソードを持つ「寒月」(京都市美術館蔵/泉屋博古館展示)についても紹介。「こちらは、雪の月夜、竹林をそぞろ歩む狐を描いた作品。冴えた月の光と凜とした空気感に満ち、一見モノクロームの世界のように見えますが、よく観察すると青や緑など様々な色彩が緻密に散りばめられています。実は色彩豊かな作品なのです。」と見どころを語りました。
櫻谷が何より重んじたのが”写生”でした。櫻谷の旧邸宅である櫻谷文庫には500冊以上の写生帖が遺されています。実方さんは、写生を繰り返すことでそのものに向き合い、対象に迫ることで本質を写し取るという京都伝統の写生の精神が、櫻谷にも強くあったのではと指摘しました。
近年、市内で相次いで発見された櫻谷作品の中で、文展出品の翌年から約100年ぶりに発見された「かりくら」(櫻谷文庫蔵/泉屋博古館展示)の修復の様子も紹介。タテ260cmを越える巨大な双幅に勇壮華麗な武士、枯野を疾走する馬が鮮やかによみがえった過程を解説しました。本作は、発見から約2年の修復を経て、今秋に、泉屋博古館にて展示されます。
植田さんは、新たに発見され、京都府に寄贈された櫻谷作品について語りました。「京都画壇というと、竹内栖鳳や上村松園などを思い浮かべると思いますが、木島櫻谷をはじめ、近代日本画の作家はほかにもまだまだ京都に埋もれています。木島櫻谷について展覧会を通じて魅力を伝えていきたいですし、関心を持っていただきたいです」と呼びかけました。
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