藤本 秀 -信楽の原風景-

藤本 秀 -信楽の原風景-

大地の形象


作者の工房は信楽・雲井の山中にある。工房への道筋は舗装されていない。

そこでは沢水や風雨が花崗岩を洗い流して、周辺に粘りのある土が生成されている。

大地に寄り添うイメージは、こうした風景のなかから紡ぎだされてゆく。

Twin Towers
平成12
高(H)48.0×幅(W)17.0×奥行(D)18.0
高(H)44.5×幅(W)16.0×奥行(D)18.0

 

大地を削り出したようなフォルムと、荒々しい野生味のある焼肌。その姿は火山から噴火した溶岩が流れてゆく情景を想わせる。

炎とのせめぎ合いのなかで、粗い土肌と灰や熾き(炭素)が激しく噛み付き合う、自然釉の色調の変化と焦げがつくる焼肌の豊かな表情。そこには、原土の魅力が存分に発揮されている。

古陶信楽の魅力について作者は、「包容力をそなえた素朴な美しさと、それをつくりだす他の産地よりも若い陶土」にあるという。

そして「その陶土を如何に捉え何を表現するのか」と自問する。

陶土が創成された太古の、荒涼とした信楽の原風景のイメージ。

そこには、信楽の大地に寄り添い、その声に耳を傾け続ける作者の姿が垣間見える。

 

藤本 秀

FUJIMOTO, Hide

1954 滋賀県甲賀市甲南町生まれ

1990 野焼きによる陶作品の制作をはじめる-'95 信楽・雲井の山中に穴窯を築窯

2004 全米陶芸教育者会議(アメリカ・インディアナ州)にて薪窯焼成ワークショップ

2011 第6回京畿道世界陶磁ビエンナーレ(韓国/利川世界陶磁センター)ゲストアーティスト

2017 富平国際陶芸美術館(中国・陝西省)ゲストアーティストブゴリオンギ窯(韓国・金提)薪窯ワークショップに参加

2018 滋賀県立陶芸の森派遣プログラム(台湾/台南芸術大学)