荒川 智 -手に触れ使う事への強い意識-

荒川 智 -手に触れ使う事への強い意識-

動きのある緋色と緑釉の釉調

本作は適度に見込みの釉面に降灰するように、露出した状態で棚板の最上段に窯詰めして焼成されている。動きのある緋色は燃焼室内の炎の流れをイメージして、大小の器物を周囲に配置するなどの工夫で得られたものである。

 

信楽緑釉しのぎ器
平成8
高26.0×口径50.6×底径10.0
個人蔵

 

穏やかな濃淡のある緋色と、見込みに流れる緑釉が、信楽の豊かな情景を想わせる。

信楽の伝統的な焼締め陶の景色を現代に翻案した作品だ。土の質感と釉薬の流れに、豊かな表情をつくりだす鎬は、

半球形の平明なフォルムに動きと変化を与え、色調のコントラストとともに、観者の意識を内と外の関係へと喚起してゆく。

焼肌が装飾となる信楽の焼締め陶で、釉薬が施されることは余りない。

本作では敢えて釉薬を施し灰の干渉を受け易い薪窯で焼成することで、鎬で露わにされた粗い土肌に、艶のない趣のある釉調をつくりだしている。

そこには食器づくりの経験から得た、作者の優れた造形感覚や手に触れ使うことへの強い意識が認められるだろう。

 

荒川 智

ARAKAWA, Satoshi

1971 山形県新庄市生まれ

1992 作陶を志して信楽に転居、地元製陶メーカーに入社

1997 製陶メーカーを退社、大谷司朗氏(信楽)に師事

2001 独立して創作活動を始める 

2010 信楽町柞原に転居、翌年地上式穴窯を築窯