多彩な質感を示す原土
信楽の陶土は長石・石英・黒雲母などを含む、花崗岩が風化した古琵琶湖層から採取される。
本作で用いた2種類の粗い原土は、可塑性が低く成形が難しい。
単味で使用されることは少なく、通常は他の土とブレンドして使用される。
信楽混成壺
令和元
高37.0×口径9.8
×胴径35.2×底径12.2
個人蔵
原土の豊かな質感と表情を、現代の景色に見立てた作品。粘りのある白土に、粗い2種類の原土を貼り付けた素地の肌合いは、石や砂が混じり合う原土の細部を観るようだ。
茶褐色と緋色そしてピンクに発色した、瑞々しく無む垢くな焼肌の質感と、その魅力を効果的に演出する柔らかな丸みを帯びたフォルム。その姿には、土の個性からイメージを導く、作者の表現思考が認められよう。
土について作者は、「身勝手な考えを押し付ければ壁となり、向き合えば助言を与えてくれる」存在だという。
《混成》シリーズと命名された本作は、そうした作者と土を巡る対話から紡ぎだされた作品だ。そこには信楽の陶土と焼締め陶、そして〈やきもの〉の奥深さが示されている。
古谷和也 FURUTANI, Kazuya 1976 滋賀県甲賀市信楽町生まれ 1997 山口芸術短期大学造形美術コース卒業 1998 京都府立陶工技術専門学校修了-父古谷道生に師事、築窯と焼成技術を学ぶ 2002 穴窯築窯-'05・'06・'12・'18 |