破れたフォルム
本作の破れは土が熱で収縮する特性を活かしてつくられる。
轆轤(ろくろ)成形後に刃の粗い鋸で切れ目を入れて焼成。器体は焼成中に轆轤の回転方向へ捻じれるように歪み、亀裂を大きく広げてゆく。また櫛目模様でも同じ鋸を使用している
破れ器
令和2
高36.6×幅27.1
×奥行26.0×底径11.4
破断した大地を想わせる、大きな歪みとともに生じた亀裂と、焼成の激しさを示す土肌の多彩な表情。
口縁部から底部へ縦に大きく破れた隙間からは、自然釉に覆われた粗い素地が姿をみせる。
観者の意識を断面そして内と外の関係性へと喚起するとともに、焼肌だけでなく、フォルムからもうひとつの景色をつくりだす。
緊張感のある力強い存在感とともに、作者の焼締め像を示す特性は、口縁から底に向けて入れられた粗い櫛目にあるといえるだろう。
灰被りや自然釉の色合いと流れに、多種多彩な変化をもたらしてゆく。破れたフォルムと景色が融和しまた相反しつつ、生み出されてゆく窯変。
その姿に作者が見据える現代の信楽焼をうかがい知ることができる。
澤 清嗣 SAWA, Kiyotsugu 1948 滋賀県甲賀市信楽町生まれ 1967 滋賀県立甲南高等学校窯業科卒業 1968 京都府立陶工訓練校修了-京都・泉涌寺の窯元に入社、清水尚泉氏に師事 1969 信楽で製陶業を営む家業に従事(-'88)髙橋春斎氏(信楽)に師事して作陶をはじめる 1981 登窯と穴窯を築き独立、本格的に作家活動をはじめる 2009 滋賀県立陶芸の森創作研修館ゲストアーティスト('14)-中世金山復元窯で焼成 |