地球が壮大な時間とともに作り出す土
今、この瞬間のこの大地の土を取り上げて焼締めるのが信楽の陶芸のダイナミズム。
篠原は薪窯の1300 度もの高温の炎の中の状況を
“土が、燃料の薪が燃えて窯の中に舞い上がる灰に溶かされている”
のだと実感を込めて熱く語る。
窯変蹲壺
左:平成28 中央:平成29 右:令和2
左:高21.3×口径8.2×胴径17.4×底径14.3
中央:高22.4×口径8.9×胴径18.9×底径14.5
右:高19.5×口径8.3×胴径16.6×底径12.7
個人蔵
信楽の土の可能性に気付かせてくれたのは、アメリカの薪窯の研究者や、陶芸家たちであった。アメリカの2億年前の粘土の歴史に触れることで、信楽の土に対する考え方から解き放たれたという。
信楽の粘土は南から北への琵琶湖の移動でできたもので300 万年前のものというから、アメリカに比べて極めて新しい。そして信楽の土は場所によって成分が異なる。
《窯変蹲壺》は、篠原の好奇心と土との格闘の跡がうかがえる3 点である。
左端の深緑色のビードロ釉が流れる壺は、焼成最後の5日目の夜に窯から引き出し、急冷することで灰の中の鉄分が発色したもの。
中央の作品は、焼成によってこの魅惑的な紫色が現われたことから、この窯変の不思議を解明したいとみずから揺さぶられた壺であった。
3つ目の壺は、信楽の山から掘った原土そのままを成形し、1300 度の高温で焼き締めたもの。
篠原 希 SHINOHARA, Nozomu 1972 大阪府生まれ 1991 古谷信男氏(信楽)に師事 1998 滋賀県立信楽窯業技術試験場釉薬科修了 1999 信楽・黄瀬にて独立、本格的な作陶活動をはじめる 2004 伊賀に新たに穴窯を築く 2007 経済産業大臣指定信楽焼伝統工芸士に認定 2012 第23回秀明文化基金賞 2017 滋賀県立陶芸の森派遣プログラム(アメリカ/クラフトスクールUS)-ペンランド、へイスタックで滞在制作 2019 スタンフォード大学、ユタ州立大学にてワークショップ、トレインキルン焼成に参加 |
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