記念講演会「歌仙絵の最高峰ー佐竹本三十六歌仙絵の表現と情緒ー」が開催されました。

記念講演会「歌仙絵の最高峰ー佐竹本三十六歌仙絵の表現と情緒ー」が開催されました。

11月2日(土)、京都国立博物館平成知新館講堂にて記念講演会「歌仙絵の最高峰ー佐竹本三十六歌仙絵の表現と情緒ー」が開催されました。


講師は、京都国立博物館研究員で本展を担当した井並林太郎氏。
約200名もの人が聴講に訪れ、会場は満席となりました。
三十六歌仙や歌仙絵の成り立ちから、用いられた絵画技法などの特徴や、画風分類の研究結果をスライドを交えながら、じっくり90分間お話しくださいました。

その内容の一部をご紹介します。

<平安時代の日本の肖像画の特徴>

“引目鉤鼻(ひきめかぎばな)”と呼ばれる、一本の線のような目と小さな三角形の鼻を描く表現技法で、
人物ごとの描き分けはなされていませんでした。

<鎌倉時代の日本の肖像画の特徴>

太っている、痩せている、たれ目、つり目など人物の外見的な特徴をとらえて描く表現技法“似絵(にせえ)”が登場。
似絵の確立と同時期に、歌人の姿を和歌とともに描く歌仙絵も登場しました。


<佐竹本三十六歌仙絵の特徴>

●料紙の加工
佐竹本三十六歌仙絵が描かれた料紙は、打紙(うちがみ・鎚で打って光沢を出した紙)に雲母引き(きらびき・鉱物の雲母の粉末を塗布した紙。キラキラとした光沢がでる)といった丹念な加工が施されてます。

●料紙の大きさ
通常の絵巻物は縦幅約30cmほどの紙が多いのに対し、佐竹本三十六歌仙絵は約37㎝と大きな紙が使われています。
紙が貴重な時代において、大きな紙を使うことは特別な意味があったことを示しています。

●金銀泥の多様
歌仙の衣服に銀泥や金泥が多く用いられています
描かれた当初は、キラキラと輝く豪華な画面だったでしょう。

●文様表現の多様さ
佐竹本三十六歌仙絵は他の歌仙絵では見られないような緻密な文様や、絵具で盛り上げるように描いた文様など多様な文様表現が見られます。

描かれた当時の資料が現存していない佐竹本三十六歌仙絵ですが、他の歌仙絵にはない多くの特徴がみられることから、当時から特別な意味を持つ絵巻として描かれたと推測されます。


<佐竹本三十六歌仙絵の魅力>

佐竹本三十六歌仙絵は、人の心の内面を描き表した作品としてもすぐれています。
共に書かれた和歌に合わせて、仕草や視線の向きなどで歌仙の等身大の悩みや苦しみなどの心情を人の姿として描き出しています。
中世の時代に“人間を描いた”という意味で他に類を見ない貴重な作品だといえます。

井並研究員、ありがとうございました。

佐竹本三十六歌仙絵が展覧会として過去最大の規模で集結する本展は、11月24日までの開催です。お見逃しなく。