6/2(日)、「堂本印象 ほとけを描く ほとけを愛でる」の関連イベントとして、講演会「堂本印象旧蔵の仏像をめぐって」が開催されました。
講師は仏教美術が専門の京都市立芸術大学教授・礪波恵昭先生。
本展では、堂本印象が自ら収集した仏像も展示されています。講演会では、出品作の仏像の特徴についての解説されました。
ここでは講演会の内容から一部抜粋し、印象コレクションの仏像についてご紹介します。
講演会では様々な仏像の画像を比較しながら解説が行われました。
【堂本印象所蔵の仏像 ②天部立像(てんぶりゅうぞう)】
この像は、よろいを身に着けた姿から、仏法を守る護法神「天」を表した像であることが分かります。
この像には以下のような特徴が見られます。
・細身で華奢な体つき ・怒った表情をしているにもかかわらず、顔の筋肉の抑揚が控えめで上品な印象 ・木の乾燥を防ぐために像の内部をくりぬく「内刳(うちぐり)」が施されている |
これらは、平安時代後期の典型的な様式であり、十二世紀頃(平安時代)に作られた像であるということが分かります。
この時代は仏像表現が一番大人しい時期ともいわれる時代で、この像も仏敵を退散させる武将神であるにもかかわらず、非常に優美で控えめな印象を与えます。
天には梵天や毘沙門天などさまざまな種類があり、その持ち物やポーズで違いを表します。
それではこの像はどの天を表したものなのでしょうか。
この像の左手を大きく上げたポーズは元々は武器を地面に突き立てていたものと考えられますが、
その武器がなくなってしまった今では、ポーズと表情しか手がかりがありません。
似たようなポーズをしている作例がある持国天や増長天の可能性も考えられますが、
足の重心の位置から見ると毘沙門天にも似たような作例があり、
この天部立像がなんの像であるかは断定することが難しい状況となっています。
★印象と天部立像
この像を気に入っていた印象。
和歌山の別邸にも持参していたことが分かる写真が残っています。
印象コレクションの仏像を展示するのは今回が初の機会!
また展覧会会場では、より詳細な作品解説を配布しておりますので是非お越しください。
次回は、阿弥陀如来坐像についての紹介です。