「堂本印象 創造への挑戦」注目作品①

京都府立堂本印象美術館リニューアルオープン記念展「堂本印象 創造への挑戦」の注目作品を同館学芸員の松尾敦子さんにご紹介いただきます。今回は前期展示の2作品を取り上げます。

先月、リニューアルオープンした京都府立堂本印象美術館。
開館当時の明るくて美しい色合いの外観の復活、庭園整備や隣接する京都市バスの停留所を一体感のあるデザインとするなど好評を得ています。
リニューアルオープンを記念した展覧会「堂本印象 創造への挑戦」が6月10日まで、「きぬかけの路」にある同館(京都市北区平野上柳町)で開催中です。

この展覧会では、堂本印象の若き日から晩年までの代表作を一堂に見ることができるほか数十年ぶりに同館で展示される話題作品もご覧いただくことができます。そこで、同館学芸員の松尾敦子さんに、その中でも「特にご覧いただきたい作品」をご紹介いただきました。
今回は、前期(3/21-4/30)に展示されている作品を取り上げます。


<右隻>


<左隻>

堂本印象「雲収日昇」(うんしゅうにっしょう)
1938年(昭和13) 47歳
第1回東丘社展出品作品  京都府立堂本印象美術館蔵

あけぼのの時刻。昇る日によって夜の雲が消え、次第に山野が明るくなる情景です。墨の階調をいかし松林の茂る幽遠な山々が表現されています。画面左下には水鳥の群れが描かれており、そこに湖があることに気づきます。
昭和8年(1933)に、堂本印象主宰による画塾、東丘社(とうきゅうしゃ)が設立されました。本作は設立から5年目にして開催された第1回展で発表したものです。当時、50名以上の弟子を抱えていた師が示す手本というべき作品です。


堂本印象「調鞠図」(ちょうきくず)
1921(大正10)年 30歳(発表当時29歳)
第3回帝展出品作品 永青文庫蔵

時代は中国の唐時代でしょうか。高貴な女性が男装し、蹴鞠に興じています。花冠を被り、ペルシャ風の赤い衣を身につけた人物は革のベルトをつけ、もう一方の人物が纏う中国式の衣装の袖口と裾には龍が描かれています。このような表現は、印象が画家になる前、売れっ子の織物図案家として活躍していた腕を偲ばせます。
本作で帝展特選を受け、画家として高く評価されようになります。印象にとって重要な作品です。


※今回紹介した作品は430日までの展示です