国宝「三十六人家集」特別公開特集 ⑤

国宝「三十六人家集」特別公開特集 ⑤

この秋から西本願寺で第25代専如門主伝灯奉告法要が行われるのを記念して、浄土真宗と本願寺の展覧会を開催します。宗祖・親鸞聖人から安土桃山時代に活躍した第11代顕如宗主までの歴代宗主に加え、専如門主に受け継がれてきた法宝物や国宝「三十六人家集」をはじめとする名宝など約120件を公開します。国宝「三十六人家集」は、平安時代に選ばれた和歌の名手三十六人歌仙の家集を集大成した、現存最古とされる西本願寺蔵の37帖です。本展で公開される5帖(「小町集」「元真集」「家持集」「忠見集」「敦忠集」)をシリーズで紹介します。

第5回目は、「敦忠集」です。※11月27日(日)まで展示

国宝「本願寺本 三十六人家集」37帖のうち 敦忠集 彩箋墨書 平安時代後期(12世紀) 西本願寺蔵

国宝「本願寺本 三十六人家集」37帖のうち 敦忠集

 藤原敦忠(あつただ)(906〜43年)は、左大臣時平(ときひら)の三男で、「逢(あ)ひ見ての のちの心に くらぶれば」の和歌がおなじみ。美貌の公卿(くぎょう)・歌人として知られ、琵琶の名手で「枇杷(びわ)中納言」とも称された。「敦忠集」は継紙(つぎかみ)を用いず、染紙(そめがみ)に雲母刷(きらず)りが施された唐紙(からかみ)を全面にわたって使用するのが特徴で、図版は家集の冒頭の部分。鳳凰丸文(ほうおうまるもん)を散らした宝相華唐草文(ほうそうげからくさもん)の雲母刷りに、金泥による植物文や千鳥がよく映える料紙に、流麗繊細な筆致で墨書される。敦忠は権(ごんの)中納言に叙された翌年、38歳で亡くなったため、145首14紙と紙数も少なく、本特別展の会期中、最後の2週間のみの展示となる。

龍谷大学 龍谷ミュージアム 副館長 石川知彦