国宝「三十六人家集」特別公開特集 ③

国宝「三十六人家集」特別公開特集 ③

この秋から西本願寺で第25代専如門主伝灯奉告法要が行われるのを記念して、浄土真宗と本願寺の展覧会を開催します。宗祖・親鸞聖人から安土桃山時代に活躍した第11代顕如宗主までの歴代宗主に加え、専如門主に受け継がれてきた法宝物や国宝「三十六人家集」をはじめとする名宝など約120件を公開します。国宝「三十六人家集」は、平安時代に選ばれた和歌の名手三十六人歌仙の家集を集大成した、現存最古とされる西本願寺蔵の37帖です。本展で公開される5帖(「小町集」「元真集」「家持集」「忠見集」「敦忠集」)をシリーズで紹介します。

第3回目は、「家持集」です。※11月13日(日)まで展示

 

国宝「本願寺本 三十六人家集」37帖のうち 家持集 彩箋墨書 平安時代後期(12世紀) 西本願寺蔵

国宝「本願寺本 三十六人家集」37帖のうち 家持集 

 大伴家持(おおとものやかもち,718ごろ~785)は大納言大伴旅人(たびと)の子で、奈良時代の歌人。万葉集に収められた歌は最多で、中心的な編者とされる。本集は、継紙(つぎがみ)ではなく一枚紙の染紙(そめがみ)が全帖に用いられることが特徴で、22紙の料紙に312首が収められる。

図版では、濃緑の染紙全面に細かな雲母(きら)や金銀箔がまかれ、銀泥で描かれた秋草や鳥の群れがみえる。そこに、2行ずつ8首の和歌が優雅な筆で墨書される。

家持の歌は四季や恋を詠んだものが多く、例えば3首目には、「七夕も過ぎ、彦星が独り流した涙で、天の川の水かさもきっと増えていることだろう」とある。技巧が凝らされた料紙と相まって、美しくも悲しげな情景がありありと浮かんでくる。

龍谷大学 龍谷ミュージアム 岩田朋子