「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.5<小林古径編>

「この筆ぐせがすごい!近代日本画家たちの競演!」特集vol.5<小林古径編>

泉屋博古館で開催される「絵描きの筆ぐせ、腕くらべ ―住友コレクションの近代日本画」。住友邸を飾った日本画家たちのくせのある名画が勢揃いの見逃せない展覧会です。近代日本画の名品を画家の筆ぐせからご鑑賞いただきます。本特集では、住友コレクションの近代日本画から6名の画家を選出し、泉屋博古館分館長の野地耕一郎先生に彼らの「筆ぐせ」の魅力をご紹介いただきます!!

◆鉄線描+似絵+琳派で出来たフランス人形。

小林古径 人形 昭和14年(1939)
紙本墨画淡彩・額 66.0×75.0㎝

小林古径(1883-1957)は現在の新潟県上越市の生まれ。青年時代は安田靫彦らと共にやまと絵による歴史人物画の研鑽を積んだ。大正期に再興された日本美術院の同人となり、大正11年より一年間欧州に留学。その時、大英博物館での中国古典絵画の模写によって絹糸のような美しい「鉄線描」を修得した。そして、余白を生かした無駄のない構成による古径の謹厳な作風は、のちに「新古典主義」と称され、昭和戦前期の日本画に大きな影響を与えている。
このフランス人形は、渡欧の記念に愛娘への土産として手に入れた古様ながら典雅なもの。顔や手は肥痩のない鉄線描で形を整え、黒い服は水墨のたらし込みと部分的に堀塗りなど琳派的技法による濃淡を効かせて立体感を表わしている。濃墨による柄の浮き出し法は鎌倉期の似絵などの衣の表現にも通じている。
謹厳な作風ゆえに逆に筆ぐせを感じさせないのが、古典絵画に精通した古径ならではの技量ともいえそうだ。


次回は最終回!東山魁夷の筆ぐせをご紹介します!お楽しみに!!