【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 180】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「センチメンタル・バリュー」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 180】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「センチメンタル・バリュー」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
2月のオススメはこちら!

 

“世代間トラウマ”によって機能不全に陥った家族の再生ドラマ。

2025年・第78回カンヌ国際映画祭で本映画祭最長19分間に及ぶ圧巻のスタンディングオベーションで会場を沸かせ、堂々の<グランプリ>を受賞した『センチメンタル・バリュー』がついに公開です。
監督は『わたしは最悪。』で日本でも多くの人々の記憶に名を刻んだノルウェー育ちのヨアキム・トリアー。
『わたしは最悪。』から再びレナーテ・レインスヴェを主演に迎えたほか、父親役には名優ステラン・スカルスガルド、ハリウッドからはエル・ファニングも参加し、壊れかけた家族の複雑で緊張感に満ちた人間模様を描写します。

 

物語の舞台はオスロ。
舞台俳優として活躍するノーラと、息子と夫とともに家庭を築く妹のアグネス。
母の葬式の日、幼い頃に家族を捨てて以来、長らく音信不通だった映画監督の父グスタヴが二人の前に現れます。
その目的は、自身の15年ぶりの復帰作となる新作映画の主演をノーラに依頼するためでした。
自分たちを捨てたことにいまだ怒りと失望を抱えるノーラは、脚本を読むまでもなく出演を拒否。
ほどなくて、代役にはアメリカの人気若手スターであるレイチェル・ケンプが抜擢されました。
さらに撮影場所が家族で暮らしてきた実家であることを知り、ノーラの心中は穏やかではありません……。

娘たちが自分勝手な(まるでウェス・アンダーソン作品のロイヤル・テネンバーグ氏のような!)父を赦す家族の再生物語。
本作のあらすじを見ると、なんと「ありがちな」物語ではないかと疑ってしまうかもしれません。
しかし、この映画を特別なものにしているのは、沈黙と不在によって父から娘たちに継承されてしまった「世代間トラウマ」をいかに乗り越えようとするのか、またその痛みと孤独を芸術はどう引き受けるのかという問いを、セリフはシンプルに、しかし俳優たちのちょっとした目線(拒絶や切望、期待など)で語ることにあると言えます。
家族とともに主役として輝くオスロの見事で壮麗な家は、ひびが入り、傾いています。
それはこの家族がひとつの「家」の良いも悪いも含めた多くの思い出によって、生を輝かせると同時に苦しめられてきたことを表すかのようです。
静かに、でも映像として確かに、軋轢と孤独と、ほのかな回復の兆しを見せる本作は、ヨアキム・トリアー監督の集大成として必見の一作です。

 

 

執筆:川添結生(京都シネマ)



2月20日(金)公開 
センチメンタル・バリュー
(原題)Sentimental Value
2025/ノルウェー/133分
監督:ヨアキム・トリアー
出演:レナーテ・レインスヴェ、ステラン・スカルスガルド、インガ・イブスドッテル・リッレオース、エル・ファニング

©2025 MER FILM / EYE EYE PICTURES / LUMEN / MK PRODUCTIONS / ZENTROPA ENTERTAINMENTS5 APS / ZENTROPA SWEDEN AB / KOMPLIZEN FILM / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ARTE FRANCE CINÉMA / FILM I VÄST / OSLO FILM FUND / MEDIEFONDET ZEFYR / ZDF / ARTE

【上映スケジュール】
上映時間などの詳細は京都シネマ公式ホームページにてご確認下さい。



京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。

問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/