

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
12月のオススメはこちら!


家族が集まる“最後の”ディナーを描いた奇妙で美しいクリスマス映画。
特に予定なんてないけれど、電飾がキラキラと煌めく街を歩いていると、身にしみる寒さに反して、どこかわくわくしてしまっていることに気づく。
そんな自分の、どこから湧いてくるのか分からない、漠然とした幸福感に似たなにかを感じることができる映画があります。
『クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント』です。
『ハム・オン・ライ』と『ハッパーズ・コメット』で詩情豊かな映像表現と実験的な映画作りで高く評価されたタイラー・タオルミーナ監督が、独自の映像感覚でクリスマス映画を新たに描き出しました。
クリスマス・イブに複数の世代や立場の人々がひとつの家に集まるお話です。


物語の舞台は、ロングアイランドにある小さな町のとある家。
クリスマス・イブの夜に、4世代のバルサーノ家が集まります。しかし、毎年恒例のこの集まりは、もしかしたら今年が最後になるかもしれません。
一家の中心的人物である祖母の死期が近いことが次第に明らかになっていきます。
そんな不安を抱えながら陽気にお酒を飲み、語り合うおばやおじ、そして祖母。
一方、10代の少女エミリーは、母の干渉にうんざりしています。
みんなが賑やかな祝宴に夢中になるなか、エミリーと同世代のいとこであるミシェルはこっそりと家を抜け出して、同級生たちとダイナーで落ち合うことに……。


映画は、通常の語りからは逸脱して、まとまりがありません。
最初はだれがいるのか、なにが起こっているのか、はっきりと分かりません。
次第に、一家の関係性や問題なんかがなんとなく把握できていきます。
まるで、見知らぬ人のパーティに招かれたかのように、楽しい気持ちと疲れを同時に抱きながら夜が過ぎていくのです。
家族の集まりという一日の大混乱のなかで巻き起こる、親密さと愛情とユーモアと、先の不安に端を発した口論、そして若い世代によるささやかな抵抗。
だれもが家族の集まりのなかで体験したことのあるような騒々しくてちょっぴり寂しくて、だれもが祝福されるような夜を追体験できる、クリスマスシーズンにぴったりの作品です。


執筆:川添結生(京都シネマ)

12月19日(金)-12月30日(火)公開
クリスマス・イブ・イン・ミラーズ・ポイント
(原題)Christmas Eve in Miller’s Point
2024/アメリカ/108分
監督:タイラー・タオルミーナ
出演:マイケル・セラ、エルシー・フィッシャー、マリア・ディッツィア、ベン・シェンクマン
© 2024 Millers Point Film LLC. All rights reserved.
【上映スケジュール】
上映時間などの詳細は京都シネマ公式ホームページにてご確認下さい。

京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
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