「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
9月のオススメはこちら!
ザ・ザ・コルダのフェニキア計画
© 2025 TPS Productions, LLC. All Rights Reserved.
ユーモアたっぷり、ちょっとグロテスクなW・アンダーソン流クライム・コメディ。
第78回カンヌ国際映画祭でのプレミア上映では7分半にわたるスタンディングオベーションを浴びたウェス・アンダーソン監督の最新作『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』が公開!
かつて機能不全に陥った血のつながった家族の再生を描いた『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』や『ダージリン急行』に、ちょっぴり残酷なユーモアをちりばめた『グランド・ブタペストホテル』をごった混ぜにして、あたらしい境地へと立ったウェス・アンダーソン監督の現在地点です。
© 2025 TPS Productions, LLC. All Rights Reserved.
舞台は、1950年、独立した複数の都市国家からなる架空の大独立国フェニキア。
ヨーロッパの大富豪で6度の暗殺未遂から生き延びたザ・ザ・コルダは、フェニキア全域に及ぶインフラを整備する大規模プロジェクト“フェニキア計画”の実現を目指していました。
しかし、多くを敵に回してきたザ・ザの目の前に妨害行為が立ちはだかります。
離れて暮らす修道女見習いの一人娘リーズルを後継者に指名し、資金調達と計画推進のための便宜を図ってもらうため、出資者たちのもとを訪ねることに。
旅をともにし、暗殺者や裏切り者たちからの危険を切り抜けるうちに、冷え切ったリーズルとの関係にも変化が訪れて……。
1枚目:© 2025 TPS Productions, LLC. All Rights Reserved. 2枚目:Courtesy of TPS Productions_Focus Features © 2025 All Rights Reserved
この映画と主人公ザ・ザは、現在の狂気に満ちた世界を体現しているかのようです。
誰かの命や生活を犠牲にして成り立つ利益と名声を、当たり前だと思っているザ・ザ。
パウエル=プレスバーガー作品『天国への階段』(1946年)へのオマージュたっぷりな幻想的な世界では、ザ・ザは自分の卑怯な人生の正当性を神(ビル・マーレイがカメオ出演)に弁明しなければなりません。
映画はアンダーソン流の現代へ向けた痛烈な批判なのかもしれません。
しかし、ザ・ザは何度も天国の門を叩くことで表面的に“負かされないこと”を大事にしてきた生き方から、簡単でもなく、痛みを伴う贖罪の道を辿っていきます。
狂気からひょっこりと現れたユーモアと優しさが最後に勝利を収める瞬間に、アンダーソン作品ならではのクスクス笑いが止まりません。
主人公ザ・ザには、『フレンチ・ディスパッチ』で粗野ながら繊細さも併せ持つ囚人モーゼスを演じたベニチオ・デル・トロ、娘リーズル役にはケイト・ウィンスレットの強いまなざしを受け継いだミア・スレアプレトン、ほか、トム・ハンクス、スカーレット・ヨハンソン、ベネディクト・カンバーバッチ、リズ・アーメッドやブライアン・クランストン、ジェフリー・ライト、ウィレム・デフォーなど、豪華なキャスト陣も映画に深みを与えています。
至福の映像体験で、映画ファン大歓喜の一作です。
© 2025 TPS Productions, LLC. All Rights Reserved.
執筆:川添結生(京都シネマ)
9月19日(金)公開
ザ・ザ・コルダのフェニキア計画
(原題)The Phoenician Scheme
2025/米・独/101分
監督:ウェス・アンダーソン
出演:ベニチオ・デル・トロ、ミア・スレアプレトン、マイケル・セラ、リズ・アーメッド、トム・ハンクス
【上映スケジュール】
詳細は京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。
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