「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
7月のオススメはこちら!
プリシラ
LGBTQ+への愛とエールが込められたプリズムのように輝くロードムービー。
映画館・京都シネマと配給会社Gucchi’s Free Schoolが企画する上映イベント〈きょうとシネマクラブ〉、その第6弾に1994年製作の『プリシラ』を上映します。
派手な衣装とショーを愛する3人のドラァグクイーン、バーナデットとミッチ、フェリシアが繰り広げる陽気なロードムービーは、カラフルでDIY精神に満ちた衣装や胸躍る名曲の数々に彩られ、見るものの心を多彩に染めてくれる。
燦燦と太陽が照り付ける夏のはじまりにぴったりな一作です。
オーストラリア・シドニーでリップシンクショーをするドラァグクイーンのミッチのもとに、砂漠の真ん中の街アリススプリングスで開かれるショーへの出演依頼が舞い込んできます。
長年の恋人を亡くしたばかりのバーナデットと、若くて向こう見ずなフェリシアを誘い、オンボロバス「プリシラ号」に乗って街を目指すことに。
しかし、彼らの旅路は、ケンカあり、遭難あり、そしてもちろん偏見や暴力に晒される危険とも隣り合わせ。
彼らは無事にアリススプリングスへたどり着けるのでしょうか……。
ドラァグクイーンとは、諸説ありますが、19世紀末のアメリカで“The queen of drag”と名乗ったウィリアム・ドーシー・スワンが起源とされ、クィアカルチャーのなかで発展してきました。
フェイクの美学、過剰な女性性や奇抜さを楽しむ行為であると同時に、共存できないとおもわれるものを融合させ、あらたなものを創造するクリエイティブなプロテスト行為でもあります。
現在では伝説的なドラァグ・マザーであるル・ポールが主催するコンテスト番組『ル・ポールのドラァグ・レース』などポピュラーカルチャーでの活躍もめざましいです。
エイズパニックによって偏見と暴力が増幅した90年代に発表された『プリシラ』は、圧倒的な楽しさ、明るさ、そしてユーモアで全編が貫かれています。
立ち寄った街で受ける差別や偏見、葛藤を盛り込みながらも、偏見や暴力は彼女たちの存在を揺るがさない。
だからこそ、過剰な明るさはエンパワーメントにつながり、多様な観客層へとひろがった作品でした。
映画内で“Aids Fuckers Go Home”とプリシラ号にでかでかと書かれた落書きを消す塗料を買いに行ったフェリシアは店主から「どこから来たんだ?」と聞かれ、「天王星から」と答えますが、まさにこの映画、このキャラクターたち、そしてドラァグたちは、創造と変革のエネルギーをもつ惑星からやってきた革命家たち!
燦燦と照りつける太陽のように彼・彼女たちの旅路は、ゆく先々を見たこともないような優しい光に包むのです。
近年、本作の続編制作が発表されました。
本作の監督を務めたステファン·エリオット監督が引き続き監督・脚本を務める予定だそうです。
執筆:川添結生(京都シネマ)
7月4日(金)公開
「プリシラ」
(原題)The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert
1994/オーストラリア/121分
監督:ステファン・エリオット
出演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアース、ビル・ハンター、サラ・チャドウィック
© 1994 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
【上映スケジュール】
7月4日~10日:12:15~
7月11日~17日:19:25~
※7/17終了予定
詳細は京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。
京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。
問い合わせ:075-353-4723
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