【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 155】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「犬の裁判」

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 155】京都シネマSTAFFの今月のオススメ「犬の裁判」

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
5月のオススメはこちら!

犬の裁判

 

彼は有罪か無罪か?犬の罪を問う、実話に基づいた傑作法廷コメディ。

レオノール・セライユ監督の『若い女』(2017年)で嘘つき、泣き虫、孤独でいてエネルギッシュな主人公を演じ、新たなヒロイン像を体現した俳優レティシア・ドッシュが主演、そして監督デビューを飾った『犬の裁判』。
第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、パルム・ドッグ賞を受賞した本作は、3人の人間を噛んだ犬コスモスの命がかかった裁判を弁護するアヴリルの奮闘と裁判の行方を描いたコメディです。

主人公は、裁判に負けてばかりで事務所から解雇寸前の弁護士アヴリル。
次の事件では必ず勝利することを決意した矢先、ある男性から依頼が入ります。
それは、かけがえのない伴侶である愛犬コスモスの弁護でした。
コスモスは、3人の人間に噛みついたことでこのままでは法令の決まりから殺処分されてしまうというのです。
アヴリルはどうしても見過ごせず、またも勝ち目のない依頼を引き受けることになります。
まずは、飼い犬が法律上飼い主の“モノ”と見なされることへの異議を裁判官に納得させ、コスモスが被告の場に立つことに。
果たして、コスモスの命をかけた裁判の行方とは……。

映画全編には、多くの人が“当たり前”と思っているルールから外れてしまう人々への優しいまなざしに満ち溢れています。
コスモスの主人ダリウシュは視覚障がいがあり、アヴリルと友情を築く隣人のパンク少年は虐待を受けている。
もちろん人間を噛んでしまうコスモスも、古い価値観と#Me Too以降の価値観のあいだで模索を続ける弁護士アヴリルもこの社会の型から合わすことができないでいるキャラクターと言えるでしょう。
“モノ”として扱われ、声をあげても伝わらないコスモスの姿は、社会に存在しているのにも関わらず、存在していないかのように扱われる人々の姿とも重なります。
賑やかなコメディでくすくす笑いながら観ているうちに、だれの心にも根付く性別または人種、そのほか様々な事象に対する差別意識、性急に答えを求められる社会のスピードの速さとその危うさについて波及していきます。
犬好きや動物好きに限らず、この慌ただしく進んでいく現代に生きる人々全員に観て欲しい一作です。

執筆:川添結生(京都シネマ)



5月30日(金)公開 
「犬の裁判」
(原題)Le Proces du Chien
024/仏・スイス/83分
監督:レティシア・ドッシュ
出演:レティシア・ドッシュ、フランソワ・ダミアン、ジャン・パスカル・ザディ、アンヌ・ドルヴァル、コディ
©BANDE ÀPART – ATELIER DE PRODUCTION – FRANCE 2 CINÉMA – RTS RADIO TÉLÉVISION SUISSE – SRG SSR – 2024


【上映スケジュール】
 詳細は京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい。

 



京都シネマは、四条烏丸にある複合商業施設「COCON烏丸」の3階にあるミニシアターです。
日本をはじめ欧米、アジアなど世界各国の良質な映画を3スクリーンで上映しています。

問い合わせ:075-353-4723
HP:https://www.kyotocinema.jp/