【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 117】京都シネマSTAFFの今月のオススメ『ミツバチと私』

【ことしるべおでかけクラブ スタッフおススメスポットvol. 117】京都シネマSTAFFの今月のオススメ『ミツバチと私』

「京都シネマSTAFFの今月のオススメ」では、京都シネマで公開される毎月の上映作の中から、
京都シネマスタッフによる一押し作品をご紹介します。
1月のオススメ作品はこちら!

“ルシア”という光を人々が見つけるまでの、ひと夏の物語。

「ものごとに名前をつけることは、解放の過程の第一歩となる」――作家でアクティヴィストのレベッカ・ソルニットの力強い言葉です。
名指すことは、その言葉に付随するイメージやレッテルに縛られてしまうという危険性は考慮しつつも、“正しく”名前をつけることのパワーは、遥か昔から物語のなかにも存在します。
今回紹介するのは『ミツバチと私』。出生時に男性というジェンダーを割り当てられた8歳の少女が、バスク地方で過ごしたひと夏で、自らの正しい名前を見出すまでの混乱と不安、傷ときらめきを切り取った物語です。
主演を務めたソフィア・オテロの演技が絶賛され、第73回ベルリン国際映画祭にて、当時9歳にして史上最年少の最優秀主演俳優賞受賞の快挙を成し遂げました。
*ベルリン国際映画祭は2020年に男優賞・女優賞の廃止を発表し、翌年からは性別区別のない主演俳優賞、助演俳優賞が新設され、まさにそれを体現する形での受賞となりました!

主人公ルシアはある一家の末娘ですが、冒頭から家族のなかにはとげとげしい雰囲気が充満しています。
家族から男性的な名前である「アイトール」と呼ばれることに強い抵抗感を示すルシアの言葉を、真剣に聞き取ってくれる家族はいません。
彼女も、その環境のなかで心を閉ざしてしまっています。
そんななか始まった夏の休暇で、母アナの実家であるスペインのバスク地方へ行くことに。
そこで養蜂場を営む大叔母と過ごす時間が、彼女の心を解きほぐしていきます…。

出生時に割り当てられたジェンダーを生きることが当然とされたこの社会で、幼い少女が己を規定する言葉を見つけるのはたやすくありません(その内面がいかに確信に満ち、違和感が揺るがないものであったとしても)。
そんな彼女が気持ちをなんとか言葉にしようとする先に出てくるのは、拒否や否認の言葉。
何度も「性別なんて関係ない」と口にする母アナが、彼女が拒絶する「アイトール」という名前をなかなか手放さないことに、ついつい口から出てしまう美辞麗句を映画が拒絶する姿勢がうかがえます。

『ミツバチと私』は主人公の混乱や決断、もどかしさを分かりやすく説明することを目的としていません。
大叔母がそうして彼女の最大の味方であり続けたように、彼女の明るくなる表情や翳る表情を起点に、言葉をもたないある確信を根気強く映し出します。>
そうして、“正しい名前”が映画全体へと波及するとき、物語の外部である現実世界もまた“ルシア”(LUX=ルクス=光というラテン語が由来)という光に照らされていることに気づくのです。


執筆:川添結生氏(京都シネマ)



1/5(金)公開
『ミツバチと私』 

(原題) 20,000 Especies de Abejas
2023年/スペイン/128分

監 督・脚 本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
撮 影:ジナ・フェレル・ガルシア 
美 術:イザスクン・ウルキホ
編 集:ラウル・バレラス
出 演:ソフィア・オテロ パトリシア・ロペス・アルナイス アネ・ガバライン
© 2023 GARIZA FILMS INICIA FILMS SIRIMIRI FILMS ESPECIES DE ABEJAS AIE 

【上映スケジュール】
京都シネマの公式ホームページにてご確認下さい



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